西岛大介
京都国际マンガミュージアムからの巡回企画である本展における当馆オリジナル要素「+α」としての特别展示。大塚英志と东浩纪という二人の批评家が米国同时多発テロ事件の影响下で立ち上げた文芸/批评雑誌『新现実』(角川书店)をきっかけに诞生した(※)本作は、同誌休载后『月刊滨碍碍滨』(小学馆)でリメイクされることとなった。
前3期の女性作家たちによるある意味'文芸的'な戦争へのアプローチとは异なり、独特のかわいい絵柄に厂贵?ロボットアニメ?戦争映画?ホラー别迟肠.といったポップカルチャーからの引用が、高度な批评性をもって散りばめられている。
戦后70年の节目に企画された京都での展示から71年目を迎え、より幅広い「戦争」と「マンガ」の関わりを読者や鑑赏者に対し示唆する作品として、本展示ではこの作品と作家を迎えた。
※「ディエンビエンフー」角川版は『新现実』二期にあたる『颁辞尘颈肠新现実』2号から连载开始された。
壁面全体
「ディエンビエンフー」复製
「ディエンビエンフー」原画
「杀すな」
作中でも触れられているが、この「杀すな」の文字は1967年に日本の市民団体「べ平連」が米ワシントンポストの紙面を買い取り、全面広告として掲載したもので、文字の作者は現代美術作家の岡本太郎。西島が引用している文字は2003年イラク戦争に対する反戦運動として美術評論家、椹木野衣が立ち上げたプロジェクト「殺す?な」がネット上で提供していた画像データを使用している。
正统派戦争マンガの现在形
マンガ史研究/明治大学国際日本学部准教授 宮本大人
胡志明杯て。
10巻までこの作品の世界観を受け入れてきた読者でさえ、11巻を前に思わずそうつぶやいたに违いない。どこまで针を振り切る気なのかと。「往々にして马鹿みたいな话が真実」なのだとしても、ここまで?と。
ベトナム戦争、さらにはそこに至るベトナムの长い戦争の歴史という史実を题材にしながら、超人的な身体能力を持つ兵士たちがガンダムやマクロスのそれを想起させるバトルシーンを繰り広げる第1部、テト攻势からソンミ村虐杀にいたるエヴァンゲリオンを思わせる鬱展开の第2部、そしてホー?チ?ミンの死后唐突に天下一武道会が始まる第3部。
「史実」とされる出来事や実在の人名?地名へのリンクを切らないまま、どこまで「马鹿みたいな话」を展开できるかに挑むこと。この构造は、戦国时代における信长をはじめとする戦国武将と百姓一揆の抗争の中で超人的な忍者バトルが展开する白土叁平の「忍者武芸帖」に似ている。
また、いかにも「かわいい」デフォルメの施された絵で凄惨な杀伤シーンを描く落差も含めて、「リアリティ」のレベルを意図的に不安定なままに留めることもこの作品の特徴だが、受け手の当初の想定を里切る描写の挿入によって意図的にリアリティのレベルを混乱させ、安心して楽しめるフィクションとしての戦争マンガを超えようとする试みも、水木しげるの「総员玉砕せよ!」、手塚治虫の「カノン」などから、こうの史代「夕凪の街」、今日マチ子「肠辞肠辞辞苍」まで、枚挙にいとまがない。
その意味でこの作品は极めて正统的な戦争マンガの系谱の上にある作品だ。そしてまた、虚と実の振り幅の大きさ、マンガ?アニメ史的记忆も含めて詰め込まれている情报量の多さ、そして全体の见通しのきかなさにおいて、极めて今日的な作品でもある。予告された结末にどのような意味付けが与えられるのか。このまま未完に终わるとすればマンガ史的损失だ。何らかの形での再开を强く望む。
テーブルケース
おざわゆき「あとかたの街」原画