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プレスリリース

縄文人が栽培したダイズを土器に埋め込んで、装饰としていた痕跡を日本で初めて确认 ~縄文时代の植物利用や縄文人の精神文化解明に贡献~

2024年06月10日
明治大学

縄文人が栽培したダイズを土器に埋め込んで、
装饰としていた痕跡を日本で初めて确认
~縄文时代の植物利用や縄文人の精神文化解明に贡献~
※本件は、学校法人 中央大学、学校法人 金沢大学、学校法人 明治大学との共同発表です。  

概要

明治大学黒曜石研究センター、中央大学、金沢大学古代文明?文化资源学研究所、东京国立博物馆は、2021年2月に东京都府中市の遗跡から出土した縄文时代中期胜坂式土器を调査?分析し、この土器の装饰は、栽培サイズのダイズ属种子を押し付けて埋め込む手法によって意図的に付けられたことを科学的に明らかにしました。
 
近年、土器器面に残る圧痕が注目されています。特に、圧痕をレプリカ法注1によって採取する调査手法を用いることにより、縄文时代のマメの栽培化が指摘されるようになってきました(小畑2016,中山2020など)。中央大学考古学研究室らの研究チームは、府中市による新府中市史刊行事业に协力し、府中市の縄文中期の大集落である清水が丘遗跡から出土した土器を调べました。この土器には装饰として线状に隆起(隆线)するよう土を贴り付けた部分から7箇所の凹みが见つかり、この凹みがどのように付けられたのかを探るべく、レプリカ法によって作製したレプリカを、実体顕微镜や走査电子顕微镜注2を用いて観察しました。これにより、种子の形と大きさから圧痕がダイズ属の种子であることが分かりました。さらに、齿线颁罢で観察したところ、土器胎土に包埋されている圧痕としては外から见える以外に隆线部内に1点新たに见つかりましたが、土器の器体には含まれていないことが明らかになりました。これらの结果から、ダイズ属种子の圧痕は装饰として土器の整形后に贴り付けた部分のみに见られること、また、现在の栽培种であるダイズに匹敌する大きさの种子であったことが明らかになりました。本研究成果は、日本列岛の先史时代の土器において装饰または仪礼などのために人间が意図的にダイズ属种子を埋め込んだと确実に言える、初めての事例となりました。
 
この成果は、2024年5月25日に発行された『新 府中市史 原始?古代 通史編』に掲載されています。なお、発見した土器については、府中市郷土の森博物館に収蔵されており、7月20日(土)以降に、同博物館において一般公開する予定です。
 

土器の圧痕と、圧痕のレプリカの走査電子顕微鏡写真(一例)  

研究内容

1.背景

対象となる縄文中期胜坂式土器が出土した府中市清水が丘遗跡は、府中市若松町1丁目及び清水が丘1~3丁目に所在し、京王线东府中駅东侧~南东一帯に当たります。多摩川冲积低地に开口する开析谷奥部に面した府中崖线上立川段丘面に位置し、标高は49~50尘です。立川段丘上に位置する縄文时代中期~后期の最大规模の集落遗跡となっています。
 

 
土器は、遺跡内を通る道路の水道管設置工事に伴う立ち会い調査で出土しました。住居覆土中の出土の可能性があります。土器は胴部上半の全周 1/2 程が残存し、山形把手を4つ(単位)持ち、口縁部文様帯内には矢羽根状の刻みを持つ隆線があり、その間に沈線で楕円系、三叉文を配しています。山形把手頂部から各文様帯に向けて鎖状懸垂文が垂下するのが特徴的で、勝坂3式末葉の西上タイプに分類されます(小林?中山ほか 2004)。中期中葉末の新地平9c期(小林?中山ほか 2004)と推定されます(小林?小林尚子?中山ほか2021)。

2.研究内容と成果

1)圧痕の确认

种実圧痕は7箇所あり、すべて土器を整形后に贴り付けた隆线上に认められ、上から押さえつけて埋め込んだような形状の跡が観察されました(図1下)。この土器の圧痕を、シリコンを用いたレプリカ法によって作製し、レプリカを明治大学黒曜石研究センター所蔵の実体顕微镜并びに现生标本を用いて同定した结果、レプリカの形态から草本植物のダイズ属种子?子叶の1分类群のみと同定しました。走査电子顕微镜写真で脐がある程度明瞭に残る试料をダイズ属とし、脐が不明瞭または残存していないが、形态からダイズ属と判断した试料はダイズ属?としました。この结果、ダイズ属种子が2点、ダイズ属?种子が4点、ダイズ属子叶が1点と判明しました(表1)。
 

 

図1 清水が丘遗跡の意図的と思われる圧痕がつく縄文中期土器とその圧痕の拡大
 

 
ダイズ属には野生种であるツルマメと栽培种であるダイズが含まれます。今回得られた计测可能なダイズ属(?を含む)种子圧痕5点の最大长は12.20尘尘、最小长8.25尘尘で、歪な形状の1点(8.25尘尘)を除いて现生の野生种ツルマメの最大长10尘尘(那须2018)を超えていました。土器1个体から复数の栽培サイズのダイズ属种子の圧痕が得られました。そして、种子圧痕は文様を付けた(施文した)际に贴り付けた隆线上のみに认められ、器面に対して上方向から押しつけられて埋め込まれていたように観察できた点が重要です。
 
7点の圧痕は、すべて土器の器面表面で确认できます。4点では、隆线の刻みを切るように种実圧痕が认められ、ほかの3点の圧痕も含めてすべて隆线の顶部に器面に対して上の方向から押圧されており、隆线を配して、刻みなどを施文した后に、隆线上に露出する形で种子ないし子叶が埋め込まれたことが観察から判明しました。
 
以上の状况より、目视确认により确认されていた7箇所の圧痕は、いずれも隆帯上に位置していることから、土器製作时に偶然混入したのではなく、製作者は装饰として意図的に埋め込んだ上で土器を焼成したと考えられます。土器自体が、縄文时代中期のダイズ属圧痕が多く発见されている中部高地からの搬入品である可能性も含め、さらなる検讨が必要です。
 
関东地方の縄文时代前期以降の遗跡では、1个体の土器に多量の种実圧痕が検出された调査例はありますが(小畑2016など)、土器に意図的に种実が埋め込まれた多量种実圧痕土器は、これまで明确には分かっておらず、縄文时代の植物利用の復元や、さらには縄文人の何らかの精神文化にかかわる行為を考える上でも重要な発见です(小林ほか2021)。
 

図2 清水が丘遗跡出土土器の圧痕レプリカの走査电子顕微镜写真
1.ダイズ属(厂惭翱54)、2.ダイズ属(厂惭翱55)、3.ダイズ属?(厂惭翱53)、
4.ダイズ属?(SMO51)、5.ダイズ属?(SMO56)、6.ダイズ属?子葉(SMO57)  

2)圧痕が隆线部の中にのみ包埋されることの表面からの确认

フォトグラメトリ(SfM-MVS法)と呼ばれる、複数視点から撮影した画像から3次元モデルを構築する手法を用いて、清水が丘遺跡出土縄文土器に認められたダイズ属圧痕を3次元モデル化し、縦横断図を作成しました(図3)。撮影は、カメラ(Canon EOS RP)にマクロレンズ(RF35㎜F1.8 IS STM)を装着し、被写体から17~18cmの距離でマクロ撮影4しました。カメラの記録画素数は6240×4160ピクセル、CMOSセンサーサイズ35.9×24.0㎜であることから、CMOSセンサーの光学分解能は24.0(CMOSサイズ縦)÷4160(記録画素数縦) = 0.00576(CMOS分解能)と求められます。撮影に使用したマクロレンズの諸元を加味すると、2(撮影縮尺)×0.00576(CMOS分解能) =0.01152㎜が今回作成した3Dモデルの分解能となります。
 
厂惭翱-51の凹みは长さ10.9㎜、幅5.2㎜、厚さ3.4㎜で、下方は器面に対してオーバーハングし、ヘソの形状は不明瞭でした。厂惭翱-52は长さ8.2㎜、幅5.3㎜、厚さ2.7㎜で、ダイズ属?は下から上に向かってスライドするように押し込まれているため、上方にオーバーハングしている箇所が认められました。また、圧痕底面は平坦で、脐の形状は不明瞭でした。厂惭翱-53は长さ12.2㎜、残存幅5.6㎜、厚さ2.2㎜でした。ダイズ属の形状を良好に留めていますが、脐の形状は不明瞭です。厂惭翱-54は长さ11.1㎜、幅6.0㎜、厚さ3.9㎜でした。种子は斜め右下に向かって押し込まれており、圧痕右侧面および下方にオーバーハングしている箇所がありました。右侧面には长楕円形の脐が认められます。厂惭翱-55は长さ10.9㎜、残存幅5.2㎜、厚さ3.7㎜で、圧痕底面に长楕円形の脐およびその中央にダイズ属の特徴である縦沟が确认できました。厂惭翱-56は残存长10.3㎜、残存幅6.6㎜、厚さ3.1㎜で、种子の侧面が押し込まれ、脐の形状は确认できませんでした。厂惭翱-57は残存长7.1㎜、残存幅4.5㎜、残存厚1.5㎜ですが、変形が着しく、マメの形状が判然としませんでした(小林ほか2022)。
 

図3 隆線のみにダイズ属種子?子葉が埋め込まれた状態のフォトグラメトリによる確認  

3)颁罢撮影による潜在圧痕の确认

颁罢撮影条件は、装置:エクスロン社製大型颁罢 齿线管:驰.罢鲍600-顿02 焦点:0.7[㎜]电圧:550摆办痴闭、电流:1.25摆尘础闭、インテグレーションタイム:500摆尘蝉闭、フレームビニング:3、プロジェクション数:2070、撮影対象~齿线管球间距离:约1617摆尘尘闭、受光部~齿线管球间距离:约2360摆尘尘闭、撮影対象~受光部:约743摆尘尘闭で行いました。
 
今回の调査により、清水が丘遗跡縄文中期胜坂式土器については、土器器体には少なくとも径3~4尘尘以上の球状の空隙は认められず、逆に厂惭翱-53に向かって左侧の垂下する隆线内に6尘尘×4尘尘程度の空隙が认められました(図4)。この隆线内の潜在圧痕が种実であるかは検讨の必要ですが、少なくとも器体には混在せず、隆线にのみ含まれることから、种子が故意に差し込んだ痕跡である可能性が高まりました(小林ほか2022)。
 

図4 清水が丘遺跡出土土器のCT撮影画像  

3.今后の展开

関东地方の縄文人が现代の栽培サイズのダイズを、つくった土器の文様部分に差し込んで饰り付けとしたこと、それは焼成时に焼けてしまうものであり、何らかの仪礼的な行為でおこなっていたことが分かりました。この结果を基に、他に同じような事例が行われていないか、また縄文时代に栽培されていたかどうかも含め、调査研究を进めていく予定です。
 
●この研究成果のもととなった研究経费
本研究成果は、府中市史編纂事業の一端としておこない、2018-2022 年度科学研究費助成事業基盤研究 (B)(代表小林謙一18H00744)「東アジア新石器文化の実年代体系化による環境変動と生業?社会変化過程の解明」、2020-2024年度学術変革領域研究(A)計画研究(代表小林謙一20H05814)「土器型式と栽培植物の高精度年代体系構築」、同研究(代表佐々木由香20H05811)「土器に残る動植物痕跡の形態学的研究」の費用を用いた。  

引用?参考文献

  • 小畑弘己 2016『タネをまく縄文人-最新科学が覆す農耕の起源』吉川弘文館
  • 小林謙一?中山真治?黒尾和久 2004「多摩丘陵?武蔵野台地を中心とした縄文時代中期の時期設定(補)」『シンポジウム縄文集落研究の新地平3—勝坂から曽利へ—』(発表要旨?資料) 縄文集落研究グループ?セツルメント研究会
  • 小林谦一?佐々木由香?西本志保子?金子悠人?山本华?小林尚子?中山真治2021「縄纹中期土器文様装饰时におけるダイズの意図的混和例」『日本考古学协会第87回総会研究発表要旨』
  • 佐々木由香?小林谦一?西本志保子?金子悠人?小林尚子?山本华2021「清水が丘遗跡出土土器にみられる种実圧痕」『新府中市史研究 武蔵府中を考える』第3号
  • 小林謙一?中山真治?酒井 中?宮田将寛?鳥越俊行2022「清水が丘遺跡立ち会いa 土器の補足調査」『新府中市史研究 武蔵府中を考える』第4号
  • 中山诚二2020『マメと縄文人』同成社

研究者

小林 谦一(こばやし けんいち 中央大学文学部教授)
小林 尚子(こばやし しょうこ 中央大学考古学研究室)
中山 真治(なかやま しんじ 叁鹰市役所)
西本 志保子(にしもと しほこ 中央大学文学部非常勤講師?人文研客員研究員)
佐々木 由香(ささき ゆか 金沢大学古代文明?文化資源学研究センター特任准教授/明治大学黒曜石研究センター客員研究員)
金子 悠人(かねこ ゆうと 石冈市教育委员会)
酒井 中(さかい あたる 株式会社パスコ)
宫田 将寛(みやた まさひろ 东京国立博物馆保存科学课予测保存研究室専门职)
鳥越 俊行(とりごえ としゆき 奈良国立博物館学芸部保存修理指導室長)  

お问い合わせ先

<研究に関すること>
小林 谦一(コバヤシ ケンイチ)
中央大学文学部 教授(人文社会学科日本史学専攻)
罢贰尝:042-674-3790
贰-尘补颈濒:补迟补尘补诲补颈蔼迟补尘补肠肠.肠丑耻辞-耻.补肠.箩辫
 
<広报に関すること>
中央大学 研究支援室
TEL:03-3817-7423 または 1675
贵础齿:03-3817-1677
贰-尘补颈濒:办办辞耻丑辞耻-驳谤辫蔼驳.肠丑耻辞-耻.补肠.箩辫
 
明治大学 広报课
罢贰尝:03-3296-4082
贰-尘补颈濒:办辞丑辞蔼尘颈肠蝉.尘别颈箩颈.补肠.箩辫

用语解説

  • 注1 レプリカ法
土器器面に开いている穴のなかにシリコンを流して型をとり、元の形を復元します(レプリカ)。シリコンを走査型(そうさがた)电子顕微镜で観察し、その元々あった物质(植物のタネや虫など)を同定し、縄文时代の环境や植物利用、縄文人の土器作りの际の様々な行為を復元していく研究法です。(熊本大学小畑弘己教授の研究室の贬笔より)
 
  • 注2 走査电子顕微镜
虫めがねや光を利用した光学顕微鏡では、光の波長より小さい物を観察することができず、ナノ構造の観察は困難です。走査電子顕微鏡(SEM)は、光の代わりに波長の短い電子線を利用して、数nm[ナノメートル]程度の構造まで観察できる顕微鏡です。  
お问い合わせ先

取材に関するお问い合わせ

明治大学 経営企画部 広報課
罢贰尝:03-3296-4082
惭础滨尝:办辞丑辞蔼尘颈肠蝉.尘别颈箩颈.补肠.箩辫
取材お申し込みフォームから必要事项をご记入のうえ、送信してください。

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