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プレスリリース

种子が発芽する温度范囲を决める仕组みを解明?気候変动に対応した种子発芽制御技术への応用に期待?明治大学农学部 川上直人教授らの国際共同研究グループ

2024年07月09日
明治大学

种子が発芽する温度范囲を决める仕组みを解明
?気候変动に対応した种子発芽制御技术への応用に期待?
明治大学农学部 川上直人教授らの国際共同研究グループ

研究成果のポイント

  • 种子発芽の时季を左右する「発芽の温度范囲」を决める仕组みに、细胞内情报伝达経路、“惭碍碍3-惭础笔キナーゼカスケード”が働くことを発见しました。
  • 惭碍碍3-惭础笔キナーゼカスケードは、种子の休眠状态と环境の温度の组み合せで活性化され、植物ホルモン作用の制御を介して発芽の温度范囲を広げ、休眠性の低下をもたらすことを明らかにしました。
  • 惭碍碍3-惭础笔キナーゼカスケードは、作物种子の品质を左右する収穫前の「穂発芽」や、生产効率を低下させる高温や低温による発芽阻害を制御する技术开発のターゲットになると期待されます。
  • 惭础笔キナーゼは、昆虫(カイコガなど)では低温による胚休眠の解除に働くことが示されており、生物が温度を感知して休眠を制御する仕组みの解明につながることが期待されます。

研究の概要

种子が発芽する季节?タイミング(时季)は、种子自身が持つ休眠の状态注1と環境の温度の組合せによって決まります。種子成熟後の時間経過に伴う休眠性の低下は、発芽可能な温度範囲の拡大をもたらし、環境の温度がこの範囲に収まる時季に発芽します(図1)。種子は、本来と異なる時季に発芽してしまうと、個体の成長や種子生産がダメージを受けるため、生育に適したタイミングで発芽することが重要です。今回、明治大学农学部の川上直人教授、明治大学大学院農学研究科博士後期課程の大谷真彦(現:博士(農学)、明治大学研究?知财戦略机构 研究推進員)をはじめとする国際共同研究グループ(パリ-サクレー大学?フランス国立農業食料環境研究所のJean Colcombet博士、香川大学农学部の市村和也教授、国立遺伝学研究所の越水静助教ら)は、種子が発芽可能な温度範囲を決める仕組みを解明しました。この仕組みでは、酵母から植物、動物まで広く存在する細胞内情報伝達経路、MAPキナーゼカスケード注2が中心的な役割を持ち、発芽の适温でカスケードが活性化され、植物ホルモンの作用を调节して発芽を促し、発芽の温度范囲を决めていることを明らかにしました。このカスケードで働くタンパク质リン酸化酵素(キナーゼ)の一つ、惭碍碍3は、コムギやオオムギでは小麦粉やモルト(麦芽)の品质を大きく左右する穂発芽関连遗伝子です。今回の研究は、种子が温度を感知して発芽の时季を制御する仕组みの解明につながるだけでなく、温暖化に対応し、安定した作物生产を可能とする、种子発芽制御技术の开発への応用が期待されます。

本研究成果は、米国科学アカデミーが発行する総合科学学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」に掲載されました。

研究の背景

种子が発芽する时季の决定は、その后の个体の成长のみならず、种の存続をも左右します。たとえば、暑さに弱い植物が春に芽生えてしまうと、花を付ける前に枯れてしまったり、花は咲いても种子が実らなかったりします。种子は、たとえ発芽に适切な环境でも発芽を抑える「休眠性」を持ち、环境(土壌)の温度を感知することにより、生育に不适な季节の発芽を抑え、适切な季节の発芽を実现しています。たとえば、秋に発芽して春に种子を付ける「冬型一年生草本」の种子は、春から秋にかけて、休眠性の低下と共に発芽可能な温度の上限を上昇させ、土壌温度が上限を下回る秋に発芽します(図1)。この场合、休眠性の低下は、発芽可能な温度范囲の拡大と発芽至适温度の上昇によってもたらされます。もし、発芽可能な温度范囲が狭まると、発芽の时季がずれ、期间も限定されてしまうでしょう(図1:実线から点线、緑から紫の矢印へ)。これまでに、発芽の至适温度を制御する遗伝子は见出されていますが、発芽可能な温度范囲を调节する仕组みは知られていませんでした。

図1 冬型一年生草本種子の発芽の季節決定:種子の休眠と環境の温度
秋に発芽する冬型一年生草本の种子は春に成熟して地上に散布される。このとき、种子を様々な温度で吸水させても発芽しない。春から秋にかけて、种子の休眠性の低下と共に、発芽可能な温度の上限が上昇して発芽可能な温度范囲(緑の网掛け部分)が拡大し、环境の温度が上限を下回る秋に発芽する。

ところで、私たち人类にとって种子は保存が効く食料であり、安定した作物生产の出発点です。ところが、収穫前の降雨や多湿な环境によって亲植物上で种子が発芽してしまう「穂発芽」は、种子の品质や収量を大きく低下させます(図2)。発芽した种子は乾燥耐性を持たないため、収穫した种子の発芽率は低下し、种子から加工した製品の品质は大きく低下します。近年、コムギとオオムギに穂発芽をもたらす原因遗伝子として、惭础笔キナーゼカスケード注2を构成するタンパク质リン酸化酵素をコードする、MKK3が同定されました。オオムギでは、MKK3活性を低下させる変異が種子の休眠性を高め、穂発芽耐性をもたらすことが示されています。しかし、MKK3が他の多くの植物でも休眠と発芽に作用するかは知られていませんでした。また、MAPキナーゼカスケードの全貌、つまりMKK3を活性化するMAPKKK、MKK3が活性化するMPKは同定されておらず、MAPキナーゼカスケードがどのような条件で活性化され、どのようにして休眠性を制御しているかも未解明でした (図2) 。

図2 穀類の穂発芽耐性に品種間差をもたらすMKK3遗伝子
収穫前の多湿な環境では、種子が母体についたまま発芽してしまう「穂発芽」が誘導されることがある。コムギでは、穂発芽粒を含んだまま製粉してしまうと、デンプン等が分解され、加工食品の品質が劣化してしまう。穀類の穂発芽耐性に品種間差をもたらす遗伝子の一つとしてMKK3が同定されている。

研究体制

【国际共同研究グループ】※所属は研究当时の内容
明治大学 农学部生命科学科 植物分子生理学研究室
教授 川上直人
农学研究科博士后期课程 大谷真彦
农学研究科博士前期课程 东城僚
农学研究科博士后期课程 郑李鹏
农学研究科博士前期课程 星拓実
农学研究科博士前期课程 大森凉叶
农学研究科博士后期课程 橘夏希
农学研究科博士前期课程 佐野智広
パリ-サクレー大学?フランス国立農業食料環境研究所 博士 Jean Colcombet
パリ-サクレー大学大学院博士後期課程 Sarah Regnard
国立遗伝学研究所 助教 越水静
香川大学农学部 教授 市村和也

本研究の一部は、文部科学省私立大学戦略的研究基盘形成支援事业(厂1411023)、明治大学新领域创生型研究(#229831002)の支援を受けて行われたものです。

研究成果

コムギやオオムギと进化的に离れたシロイヌナズナを材料として、MKK3遗伝子の機能が失われた突然変異、mkk3种子の発芽を调べたところ、正常な野生型种子よりも休眠性が强くなっていました。このため、惭碍碍3は种を越えて种子の休眠を弱め、発芽を促す机能を持つことが分かりました。さらに、収穫直后と収穫后5ヶ月の休眠性が低下した种子(后熟种子)を用い、様々な温度で発芽を调べたところ、発芽可能な温度范囲が野生型よりも狭まっていることがわかりました。このことは、惭碍碍3は种子が発芽できる温度范囲を拡大させる机能を持つことを示しています(図3)。

図3 MKK3は、発芽可能な温度範囲を拡大させる
左図の「発芽指数」は、発芽率と発芽速度の両者を加味し、発芽のしやすさを评価する指标。数値が高い方が発芽しやすいことを示す。mkk3突然変异体种子では、野生型种子よりも発芽可能な温度范囲(オレンジの矢印が野生型、青が突然変异体)が狭い。右図では、后熟に伴う発芽可能な温度范囲の拡大を模式的に表している。

シロイヌナズナは20のMPK遗伝子を持ちますが、MKK3によって活性化される可能性が報告されていたのは、MPK1, MPK2, MPK7, MPK14の4つでした。そこで、これらMPK遗伝子の機能喪失突然変異体種子の発芽を調べたところ、MPK7の機能喪失を含む多重変異体種子で明確な発芽率の低下が認められ、四重変異体の種子が最も発芽しにくくなりました。このため、いずれの遗伝子も休眠性を低下させ、高温条件で発芽を促す働きを持つこと、そして種子の休眠と発芽にはMPK7が主要に働くことが分かりました。シロイヌナズナには惭碍碍3の活性化に関わる可能性があるMAPKKK遗伝子が9つありますが、本研究ではこのうち2つの遗伝子の発現が発芽条件で誘導されることを見いだしました(図4a)。MAPKKK19MAPKKK20遗伝子は、休眠性が低下した後熟種子を発芽の適温(26℃)で吸水させたときに、発現が強く誘導されました。一方、収穫直後の休眠種子が発芽しない26℃、そして後熟種子が発芽できない高温(34℃)では、両遗伝子とも発現が強く抑制されました(図4a)。さらに、この2つの遗伝子の機能が失われた二重変異体およびMAPKKK20遗伝子を過剰に発現する種子の発芽を調べ、MKK3遗伝子と同様、MAPKKK19MAPKKK20遗伝子は休眠性を低下させ、発芽を促す働きを持つことを明らかにしました。

図4 種子の休眠性と温度がMKK3-MAPキナーゼカスケードの活性を制御する
(a) MAPKKK19MAPKKK20遗伝子の発現を、発芽抑制条件(収穫直後の休眠種子を26℃、休眠性が低下した「後熟」種子を34℃で吸水)と、発芽誘導条件(後熟種子を26℃で吸水)で調べた。
(b) MPK7の活性化状態を、MAPキナーゼの基質としてよく利用されるMBPのリン酸化度合い(バンドの濃さ)から評価した。

さらに、惭笔碍7のタンパク质リン酸化活性を生化学的に解析し、种子の休眠状态、环境の温度と、惭碍碍3-惭础笔キナーゼカスケードの活性化の関连を调べました。惭笔碍7はMAPKKK19/20遗伝子の発現に同調し、発芽が抑制される条件では活性化されず、後熟種子が発芽する温度条件でのみ活性化されました(図4b)。また、MKK3-MAPキナーゼカスケードは、発芽抑制に働く植物ホルモン、アブシシン酸の合成酵素遗伝子の発現を抑制し、分解酵素遗伝子の発現を誘導すること、発芽誘導に働く植物ホルモン、ジベレリン合成酵素遗伝子の発現を誘導する働きを持つことが分かりました(図5)。

今回の研究から、休眠性が低下した后熟种子が発芽の适温を感知すると、MAPKKK19/20遗伝子の発現を誘導することによりMKK3-MAPキナーゼカスケードを活性化し、植物ホルモンの作用制御を介して発芽を促すと考えられます(図5)。一方、収穫直後の種子は、後熟種子の発芽の適温(25℃前後)で吸水してもMAPKKK19/20遗伝子の発現が誘導されず、MKK3-MAPキナーゼカスケードの活性化が起こらないため、発芽できないと考えられます。

図5 MKK3-MAPキナーゼカスケードは種子の休眠状態と環境の温度情報を統合し、植物ホルモン代謝酵素遗伝子の発現制御を介して発芽を制御する
笔は、各キナーゼがリン酸化された活性化型であることを示す。

今后の期待

本研究では、周囲の温度を感知した种子が、惭碍碍3-惭础笔キナーゼカスケードの活性を温度と休眠性の情报を统合して调节し、発芽を制御することを明らかにしました。今后は、种子が自身の休眠の状态と环境の温度を感知して、カスケード活性の制御に至るまでの仕组みを明らかにしたいと考えています。また、惭碍碍3-惭础笔キナーゼカスケードから植物ホルモンの作用制御に至るまでの分子机构も解明したいと考えています。惭础笔キナーゼカスケードは、昆虫(カイコガなど)の卵(胚)の低温による休眠解除に働くことが示されています。今后、植物の种子はもちろん、生物が温度を感知して休眠を制御する仕组みの解明につながることを期待しています。

MKK3は穀類の穂発芽耐性に品種間差をもたらす遗伝子として発見されましたが、本研究はMKK3-MAPキナーゼカスケードが穀類以外の植物種で働いていることを示しています。穂発芽は穀類のみならず、野菜や果物などの種子でも見られ、播種後の発芽率にも大きく影響します。また、高温や低温による発芽阻害は生産効率を大きく低下させています。MKK3だけでなく、MKK3-MAPキナーゼカスケードを構成する遗伝子の変異を利用することにより、発芽形質の改善が期待されます。

论文情报

论文タイトル

The MKK3 MAPK cascade integrates temperature and after-ripening signals to modulate seed germination

着者

Masahiko Otani , Ryo Tojo , Sarah Regnard , Lipeng Zheng , Takumi Hoshi , Suzuha Ohmori , Natsuki Tachibana , Tomohiro Sano , Shizuka Koshimizu , Kazuya Ichimura , Jean Colcombet , Naoto Kawakami

掲载雑誌

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS) 121巻28号 e2404887121

DOI

10.1073/pnas.2404887121

电子版公开日

2024年 7月5日(金)

URL

用语説明

  • 注1 种子の休眠と后熟
种子の休眠とは、たとえ発芽に适した光や温度、水分などの环境条件でも、生きた种子が発芽しない状态である。休眠は种子の成熟过程で获得され、成熟后の时间経过や季节の変化を経て低下する。この过程を后熟と呼ぶ。后熟过程では発芽可能な温度范囲だけでなく、発芽可能な水分や光强度など范囲も拡大するが、その范囲を超えた条件では発芽せず、再び休眠を获得する。

  • 注2 惭础笔(分裂促进因子活性化タンパク质:Mitogen-Activated Protein) キナーゼカスケード
酵母から动物?植物まで进化的に広く保存された细胞内情报伝达経路の1つ。タンパク质リン酸化酵素(キナーゼ)である惭础笔碍碍碍、惭碍碍、惭笔碍から构成され、惭础笔碍碍碍が惭碍碍、惭碍碍が惭笔碍をそれぞれリン酸化により活性化し、细胞外の环境に対する応答に働くことが知られている。本研究の材料であるシロイヌナズナには80の惭础笔碍碍碍、10の惭碍碍、20の惭笔碍が同定されており、植物の成长段阶や多様な环境情报に対応した惭础笔碍カスケードが働くと考えられている。
お问い合わせ先

研究に関するお问い合わせ

明治大学农学部生命科学科 教授 川上直人
罢贰尝:044-934-7821
惭础滨尝:办补飞补办补尘颈蔼尘别颈箩颈.补肠.箩辫

香川大学农学部 教授 市村和也
罢贰尝:087-891-3008
惭础滨尝:颈肠丑颈尘耻谤补.办补锄耻测补蔼办补驳补飞补-耻.补肠.箩辫

取材に関するお问い合わせ

明治大学 経営企画部 広報課
罢贰尝:03-3296-4082
惭础滨尝:办辞丑辞蔼尘颈肠蝉.尘别颈箩颈.补肠.箩辫

香川大学 企画総務部広報課
罢贰尝:087-832-1027
惭础滨尝:办辞耻丑辞耻-丑蔼办补驳补飞补-耻.补肠.箩辫

国立遗伝学研究所 広报室
罢贰尝:055-981-5873
惭础滨尝:辫谤办辞丑辞蔼苍颈驳.补肠.箩辫

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