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プレスリリース

オートファジーが保存中の种子の発芽能力を维持することを解明 ~种子を长期间保存する技术开発への贡献に期待~ 明治大学 农学部 吉本光希教授らの研究グループ

2024年03月27日
明治大学

オートファジーが保存中の种子の発芽能力を维持することを解明
~种子を长期间保存する技术开発への贡献に期待~
明治大学 农学部 吉本光希教授らの研究グループ
明治大学农学部生命科学科の吉本光希教授らの研究グループは、保存中の乾燥種子において細胞内自己成分分解システム「オートファジー(注1)」が機能することで、長期間の保存後でも発芽能力が維持されることを明らかにしました。

本件のポイント

  • 乾燥种子の胚乳(注2)においてオートファジーが働き酸化ストレスが抑制され、胚乳细胞の品质が维持されることが、种子が长期间に渡り発芽能力を保つうえで重要であることを明らかにしました。
  • 本知见は、种子の保存可能期间を延长するための新规技术の开発に贡献できる可能性を秘めています。
  • 本研究成果は、米国科学アカデミーが発行する「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」に掲载されました。
     

概要

明治大学 农学部 生命科学科の吉本光希教授、同 川上直人教授、明治大学 研究?知财戦略机构 篠崎大樹博士研究員、高山恵莉菜(農学研究科博士前期課程 修了生)は、乾燥種子が長期間に渡り発芽能力を維持するために、オートファジーが重要な役割を果たしていることを報告しました。
种子は、いわば「鎧」の役割を持つ种皮で覆われ、胚を物理的に保护したり、抗酸化物质を蓄えたりすることで、保存期间中に受けるストレスを回避しています。种皮は死细胞で构成されていますが、长期间の保存の后に発芽するためには、保存期间中に継続して受け続けるストレスに适宜応答するシステムも存在する可能性が考えられました。本报告では、种皮の内侧に存在し、乾燥种子の胚を取り囲む生细胞である胚乳细胞において、オートファジーが働き、酸化ストレスおよび细胞死を抑制することで、长期间の保存の后でも発芽能力が维持されることを明らかにしました。
本报告は、一见静的にみられる乾燥种子においても、细胞内の膜ダイナミクスを介する分解系であるオートファジーが駆动していることを明らかにした点と、长期保存した老化种子において损伤胚乳が物理的障壁となって発芽が抑制されることを解明した点に意义があります。また、本知见は、発芽能力を保ったまま种子を长期间保存するための新规技术の开発に繋がると期待されます。本成果は、米国科学アカデミーが発行する総合科学雑誌である「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」に掲载されました。本研究の一部は、 日本学術振興会 科学研究費 新学術領域研究 (研究領域提案型) (19H05713) および 特別研究員奨励費 (21J11995) の支援を受けて行われました。

研究の背景

植物は种子を形成することで発生の过程を一时停止し、生育に不适切な环境に长期に渡り耐えることができます。种子のこの特性は、人类が农业を発展させ、安定的に大量の食料を生产することができるようになるために非常に重要であったと言えます。すなわち、农作物の种子を採种?保存し、适切なタイミングで适切な量の种子を蒔き计画的に栽培することで、自然からの採集に頼らない食料生产が可能になりました。种子の状态の植物は定期的な给水が不要で、また光や栄养成分を供给する必要もないことから、低コストで保存することができます。加えて、种子のサイズは植物体に比べはるかに小さいため、限られたスペースで多くを保存でき、输送も容易であることから优れた形质をもつ作物から採种した种子を速やかに広范囲の农耕地で栽培することができます。
种子は保存期间中に外部环境からストレスを受け続けます。特に、高温や高湿度が种子にダメージを与える要因として知られています。ストレスを受けた种子には酸化ダメージが蓄积し、発芽能力が徐々に低下していきます。长期间に渡って保存した种子にはダメージが多く蓄积し、やがて発芽能力を失ってしまいます。成长中の植物体は、様々な环境ストレスに対して応答し、ストレスを克服して巧みに成长することが知られています。保存中の种子もストレスを受けることから、酸化ダメージを軽减するための応答が行われている可能性があります。しかし、乾燥种子におけるストレス応答に関する知见は少なく、种子が作られる际に抗酸化物质を合成して準备しておくといったような、受动的かつ静的な対策が主であると考えられてきました。
本研究グループは、种子がストレスに対して适时応答して能动的なダメージ軽减を行っているかもしれないと考えました。そこで、植物が备え持つストレス応答システムの一种である「オートファジー」に注目した研究を行いました。オートファジーでは、细胞内の分解対象物が脂质二重膜の小胞で包み込まれ、液胞に输送されて分解されます(図1)。オートファジーは植物个体の栄养欠乏ストレス応答などに関与することが知られていますが、乾燥种子における机能はこれまで全く报告されていませんでした。

図1:植物细胞におけるオートファジーの过程
细胞内(细胞质内)に生じた隔离膜が伸长し、分解対象物(図中赤色で表记)を包み込んだ脂质二重膜でできたオートファゴソームを形成します。オートファゴソームの外膜は液胞膜と融合し、内膜に包まれた分解対象物(オートファジックボディ)は速やかに分解されます。

研究成果

本研究は、遺伝子情報が解読されたモデル植物であるシロイヌナズナの種子を用いて行われました。シロイヌナズナではオートファジー能力を欠損したオートファジー不能植物が確立されています。本研究グループは、5年以上の長期間保存した種子の発芽率を調べ、オートファジー不能植物の種子は、正常なオートファジー能力を有する野生型植物の種子よりも発芽能力が顕著に低下していることを見出しました(図2 上)。
シロイヌナズナの種子では、将来植物体に成長する胚の周りを胚乳と呼ばれる生きた細胞の層が取り囲み、さらに死細胞である種皮で覆われています。興味深いことに、長期の保存により発芽能力が低下したオートファジー不能植物の胚は、周囲を覆う胚乳と種皮を除去することにより成長できることが明らかになりました(図2 下)。このことより、長期保存したオートファジー不能植物の種子は、胚に成長能力があるにも関わらず、種皮あるいは胚乳の問題により発芽能力が低下していると考えられました。
続いて、乾燥种子におけるオートファジー活性を调査したところ、保存期间中に胚乳细胞でオートファジーによる分解が行われていることが判明しました。また、长期保存したオートファジー不能植物の种子の胚乳细胞は8割以上が死细胞であったのに対し、同じ期间保存した野生型种子の死细胞の割合は1割未満にとどまっていることが明らかになりました(図3)。このことは、种子の保存期间中にオートファジーが駆动して、胚乳细胞のストレスが軽减されることで细胞死が抑制されていることを示しています。
种子の発芽时には、胚乳の细胞壁が软化することが知られています。长期保存したオートファジー不能植物の种子では胚乳の细胞死により细胞壁软化のプロセスを促进する遗伝子の発现が低下していると考えました。そこで、遗伝子発现解析を実施したところ、予想通り、细胞壁成分の分解酵素や细胞壁リモデリング因子の遗伝子発现が着しく低下していることが判明しました。このことより、长期保存したオートファジー不能植物では、胚乳が固いまま障壁となっているため、胚の成长が物理的に阻まれていると考えられました。
 以上の结果より、オートファジーは保存中の乾燥种子の胚乳细胞において、酸化ダメージの蓄积を抑制し正常な状态を保てるようにメンテナンスする働きがあると言えます(図4)。この机能が存在することで、长期保存后でも、吸水后に胚乳の细胞壁が正常に软化し、発芽できると考えられます(図4)。


図2:长期保存したオートファジー不能植物の种子の発芽の様子
胚の周りが胚乳および种皮で覆われた通常の种子(図上侧)においては、长期保存したオートファジー不能植物の発芽率が、同期间保存した野生型植物の种子に比べ大幅に低下します。なお、短期保存种子において、オートファジー不能植物は、野生型同等の発芽率を示します。発芽率が大幅に低下している长期保存したオートファジー不能植物の种子でも、胚乳と种皮を除去して胚のみの状态(図下侧)にすると、胚は成长することができます。


図3:胚乳细胞の细胞死の検出
胚乳细胞について死细胞を染色する试薬を処理して観察しました。长期保存したオートファジー不能植物の种子では大部分の胚乳细胞が染色されるのに対して、野生型植物で染色されたのは一部の细胞のみでした。なお、短期保存种子ではいずれの植物においても染色された胚乳细胞は殆ど検出されませんでした。図中の白矢头は染色された死细胞を示しています。
図4:シロイヌナズナ种子の构造と乾燥种子におけるオートファジーの生理机能
左下のモノクロ写真は种子の断面画像です。将来植物体に成长する「胚」の周囲を「胚乳」と呼ばれる生きた细胞の层が取り囲んでおり、そのさらに外侧(种子の最外层)が死细胞である「种皮」で覆われています。种子が発芽する际には、胚が成长して胚乳および种皮を突き破る必要があります。
オートファジーは种子保存期间中に、胚乳细胞において酸化ダメージの蓄积?细胞死を抑制します。この働きにより、长期保存后でも胚乳细胞が正常に机能し吸水后に细胞壁の软化が起こることで胚の成长を妨げる物理的バリアが解除され、発芽が可能になると考えられます。

今后の期待

本研究では、种子が保存中のストレスに适応するための新规机构を明らかにし、种子が発芽能力を失う要因について新たな一面を见出しました。発芽能力を保ったまま长期间种子を保存する技术は、农业的に重要度が非常に高いテクノロジーです。高い発芽活性を保った种子を保存しておくことは、食粮危机への対策として有効だと言えます。また、多种多様な种子を保存しておくことは、遗伝资源の确保という観点から非常に価値があります。これらの遗伝资源は、例えば、気候変动に対応した高ストレス耐性作物を作出しようとする际、非常に贵重な研究リソースとなります。さらに、先んじて种子を保存しておくことで、贵重な植物を絶灭の危机から保护することもできます。本研究の成果をさらに発展させることで、种子を长期间保存する技术开発につながることが考えられ、地球と人类社会への贡献が期待されます。

论文情报

論文タイトル:Autophagy maintains endosperm quality during seed storage to preserve germination ability in Arabidopsis
著者:Daiki Shinozaki, Erina Takayama, Naoto Kawakami, Kohki Yoshimoto
掲载雑誌:笔roceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)
顿翱滨:10.1073/辫苍补蝉.2321612121
公开日:2024年3月26日(火)
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用语説明

注1:オートファジー
細胞内の主要な自己分解経路の一種です。細胞内に生じた隔離膜が伸長し分解対象物を内包したオートファゴソームを形成、オートファゴソームを細胞内の分解区画である液胞に輸送して内容物を分解します (図1)。
注2:胚乳
種子植物の種子の内部にみられる組織です。シロイヌナズナ種子では、将来植物体になる胚の外側に胚乳細胞層が存在し、最外層が種皮で覆われています(図4 左側)。種皮は死細胞で形成されていますが、胚乳と胚は乾燥種子においても生きています。胚乳は、胚に栄養を供給することに加え、環境センサーとしても機能することなどが報告されていますが、その役割は完全に理解されていません。
お问い合わせ先

研究に関する问い合わせ

明治大学农学部生命科学科 教授 吉本光希  
罢贰尝:044-934-7039
惭础滨尝:办辞丑办颈冲测辞蝉丑颈尘辞迟辞蔼尘别颈箩颈.补肠.箩辫

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