2024.9
第26週「虎に翼」を振り返って
明治大学法学部教授、大学史資料センター所長/図书馆長
村上 一博
村上 一博
『虎に翼』が终わってしまいました。クランクアップは8月31日で、ドラマに出演した俳优さんたち、制作スタッフのほとんどがスタジオに駆けつけて、最后の撮影を终えた伊藤沙莉さんを囲み労いました。ほぼ1年に及ぶ撮影がすべて终わったのでした。私も参加していたのですが、感动的な时间でした。
『虎に翼』最后の法廷は、尊属杀重罚规定について违宪判决が下されたシーンでした。最高裁大法廷が再现されたのです。今回のドラマを通して、法廷は、狈贬碍のスタジオ内で5度作られたことになります。いずれの法廷も、実际の法廷や写真资料などを调べて设计図面をつくり、照明器具など细部にまでこだわって作られました。控室で、责任者の方から法廷セットを作るにあたってのご苦労话を何度かうかがう机会があり、その周到な準备に惊き敬服しました。台本が遅れたため、最后の最高裁大法廷のセットで、壁画が描けなかったのが心残りです。
さて、1973(昭和48)年4月、长年にわたって非人道的な虐待をされてきた父亲を杀害したことで、尊属杀の罪に问われた被告人:斧ヶ岳美位子(石桥菜津美さん)事件の判决日がやってきました。桂场裁判长によって言い渡された判决は、「被告人を惩役2年6月に処する。この裁判确定の日から3年间、右刑の执行を犹予する???尊属杀に関する刑法200条は、普通杀に関する刑法199条の法定刑に比べ着しく差别的であり、宪法14条1项に违反して无効である。この见解に反する従来の判例はこれを変更する」という内容でした。1950(昭和25)年の尊属杀および尊属致死伤の重罚规定を合宪とした判决から23年、刑法の尊属杀重罚规定は宪法违反であるという画期的判决が下されたのでした。桂场は、恩师の穂高先生の遗志を継いで、ついに従来の判例を変更し、そして退官したのでした。
というのがドラマの筋立てですが、判决文を全部読めば、最高裁长官(桂场)が、穂高イズムを実现したのではないことが分かります。穂高が(そして、轰とよねも)主张したのは、刑法200条の尊属杀重罚规定が、子(卑属)が父(尊属)を杀害するという不道徳行為を刑法が规定していること自体の违宪性(宪法第14条1项违反)だったのですが???。
実际の判决は、「尊属に対する尊重报恩は、社会生活上の基本的道义というべく、このような自然的情爱ないし普遍的伦理の维持は、刑法上の保护に値する???自己または配偶者の直系尊属を杀害するがごとき行為は???人伦の大本に反し、かかる行為をあえてした者の背伦理性は特に重い非难に値する???尊属の杀害は通常の杀人に比して一般に高度の社会的非难を受けて然るべきであるとして、このことをその処罚に反映させても、あながち不合理であるとはいえない」と述べて、亲に対する子の道徳规范を刑法に反映させ、尊属杀を重罚とすること自体は肯定しているのです。
しかし、刑法200条は、その法定刑が死刑および无期惩役刑のみで、普通杀人罪に関する刑法199条の法定刑(死刑?无期または3年以上の惩役)に比べて、着しく不合理で差别的な取扱いであること、すなわち、尊属杀で有罪になった场合には、现行法上许される2回の减軽を行っても処断刑の下限が惩役3年6月を下回ることがなく、たとえどのような酌量すべき情状があっても、刑の执行を犹予することができない(执行犹予ができるのは3年以下の惩役刑)から、宪法14条1项に违反して无効であると言っているのです。
実际の判决では、最高裁判事中でもっともリベラルな田中二郎裁判官が、「尊属杀人に関する特别の规定を设けることは、一种の身分道徳の见地???旧家族制度的伦理観に立脚するものであって、个人の尊厳と人格価値の平等を基本的な立脚点とする民主主义の理念と抵触する」と、穂高先生と同趣旨の少数意见を述べていた(2名の裁判官が同调、ほかに3名から同趣旨の意见あり)のですが、石田和外长官を含む9名の多数意见によって、退けられたのでした(ちなみに、1名は刑法200条を合宪としています)。
桂场は、最后まで、穂高イズムを実行できなかったということになるのです。
私の振り返りコメントも、今回が最后です。私の独りよがりなコメントをお読みいただいたことに厚くお礼を申し上げます。猪爪寅子(叁渊嘉子)のドラマは终わりましたが、现実社会における「寅子」(皆さん)の奋闘は、これからも続きますね。穂高先生に倣って、私も「出涸らし」としての「寅子」の奋闘を少しでも寄り添って腰押しする役割を果たしていきたいと思っています。
ありがとうございました。俳优さんたちの合言叶を私も???さよ-なら、またいつか。
【补足】
『虎に翼』の放映は终わりましたが、明治大学博物馆の展示は10月28日(月)まで継続します。ぜひ、足をお运びください。
- お问い合わせ先
-
博物館事務室(明治大学史资料センター担当)
〒101-8301 东京都千代田区神田骏河台1-1 アカデミーコモン地阶
别メール:丑颈蝉迟辞谤测★尘颈肠蝉.尘别颈箩颈.补肠.箩辫(★を蔼に置き换えてご利用ください)
罢贰尝:03-3296-4448 贵础齿:03-3296-4365
※土曜日の午后、日曜日?祝祭日?大学の定める休日は事务室が闭室となります。
当センターでは、明治大学史に関する资料を広く収集しております。
明治大学史関係资料や各种情报等がございましたら、どのようなことでも结构ですので、上记までご一报くだされば幸いです。