プルーストの小説『失われた时を求めて』は、フランス文学の金字塔ともいうべき作品である。19世纪から20世纪初头のフランス社会が主人公マルセルの视点から描かれており、恋爱、社交、政治、芸术などが织りなす豊かな世界がそこにはある。10巻にもわたる大着なのに日本でも既に5つの翻訳が存在する。その中でも僕が高远訳を特に推したいのは、何といっても言叶に色気があるからである。お菓子のマドレーヌを形容するのに、他の訳者はみな「ふっくら」と訳すのに、高远訳だけは「ぽってり」とある。なんとも艶めかしいではないか。本巻「花咲く乙女たちのかげに2」では、主人公の恋人アルベルチーヌが登场する、ノルマンディーの浜辺の场面は特に印象的である。彼女は捉えどころのない魅力の持ち主であるが、この巻でも初々しく清楚であったり、それでいて肉感的であったりする。この微妙さをプルーストは见事に描いているのだが、翻訳は独特な色気で迫っている。高远プルーストの世界を是非堪能していただきたい。
岩野卓司?法学部教授(着者は商学部教授)
岩野卓司?法学部教授(着者は商学部教授)