本书は、着者による最新のブリューゲル研究の成果を反映した、大変読み応えがある内容で、巷に多く出回っている通り一遍の解説书とは大きく异なっている。ウィーンとロッテルダムの二つの《バベルの塔》を比较することで、着者は主题の真の意味に迫る新解釈を提唱している。古い解釈を乗り越えて别の新しい解釈が生み出される研究の现场が、生き生きと伝わってくる。作品分析のみならず、ブリューゲルと知友、パトロンらとの交流、旅、信仰など、さまざまな観点が取り上げられている。また着者は、描かれた农家、纳屋、道具の実物を探して、野外民俗博物馆での调査を重ね、その结果、现代に生き続けるブリューゲルを鲜やかに浮かび上がらせた。最新の研究成果は、「垣根芝居」と「农民との结婚の荐め」の解釈にも见られる。ここでは、ブリューゲルが农民の出自であったという通説が覆され、人文主义的な教养を持つブリューゲルの姿が、着者の新解釈によって见事に描き出される。新たな知の地平へと日々进化し続けるブリューゲル研究がここにある。
瀧口美香?商学部准教授
(着者は明治大学名誉教授)
(着者は明治大学名誉教授)