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Master of Public Policy, MPP

公共政策のプロフェッショナルを育成するガバナンス研究科

【松浦正浩専任教授】トランジションを加速させた新型コロナウイルス

本コラムは松浦正浩専任教授が執筆しております。 笔者:松浦正浩教授

新型コロナウイルス感染症に罹患された方々やご家族、関係者のみなさまに谨んでお见舞い申し上げます。また、病院や官公庁をはじめ、现场で日々ご尽力されているみなさまに深く感谢申し上げます。

さて今回のコラムでは、この予期せぬ新型コロナウイルス感染症拡大により、社会システムの抜本的な改革が急加速する可能性について议论したいと思います。

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1.トランジションとは

トランジション社会の3層構造

小职は政策过程の研究として「トランジション(迟谤补苍蝉颈迟颈辞苍)」に着目してきました。日本语では移行や変革などと訳されることもあります。トランジションは欧州、特にオランダの研究者や実务家が构筑してきた概念で、まず、社会を3层构造でとらえることから始まります。

上段に长期トレンド(地球温暖化、少子高齢化など)、中段に社会のさまざまな仕组み(法制度、文化?习惯、インフラなど)、下段に个人を置きます。个人は社会の仕组みに制约を受けて行动しますし、社会の仕组みも长期トレンドに合ったものでなければ持続可能ではありません。逆に、个人が集まって社会の仕组みを改良したり、社会の仕组みが长期トレンドに影响を及ぼしたりすることもあります。

この「相互作用」が円滑に机能していれば、均衡のとれた社会が実现しているはずですが、现実には、中段にある社会の仕组みの変化が遅いことから、様々な问题が生じます。たとえば地球温暖化への対応(たとえばパリ协定の「脱炭素」)が必要だとわかっていても、产业革命以降に発展した化石燃料に依存した社会の仕组みはなかなか変わりません。

长期トレンドに合わせて社会の仕组みが変化することトランジションと言います。このトランジションを适切な方向へといかに加速できるかについて、特に地球温暖化対策の文脉で研究されています。小职もここ数年、マイカー依存から自転车利用へのトランジション、持続可能なまちづくりへのトランジションなどを、アクションリサーチ(実践的研究)として研究しています。

しかし社会の仕组みはそう简単には変化しません。小职の数年の実践でも目に见えるトランジションは起きていません。しかしこのコロナ祸により、わずか1~2か月の间に大规模なトランジションを私たちは経験することになります。

2.新型コロナウイルス感染症拡大とトランジション

1)突発的なトランジションのきっかけとしてのコロナ祸

1月には既に中国における局地的感染拡大のニュースは出始めていましたが、ここまで大きな影响が世界规模でもたらされるとは、1月の私たち自身には、想像できていなかったのではないでしょうか。小职など2月中旬に鱼钓りに出かけて、横浜の大黒ふ头に停泊するダイヤモンド?プリンセス号を见かけたときにも、まさに対岸の出来事のような认识でした。しかし2月后半になり感染者数が増加しはじめ、突然の学校一斉休校に始まり、「人的接触の8割削减」まで急激な势いで対策が拡大されることになりました。そしてあっという间に、社会の仕组みが変わってしまいました。

これも、一种の「トランジション」と言えなくもありません。お金の流れや社会生活のマナーなどがあっという间に大幅に変化したのです。もし、感染症拡大が一时的なもので、半年なり1年なりすれば完全に元通りの社会になるのであれば、トランジションとは言えないかもしれません。しかし、一时的な影响ではなく、永続的な変化をこのコロナ祸はもたらしたかもしれないのです。

2)想定外の働き方改革加速

たとえばその一つが、いわゆる「テレワーク(自宅勤务)」导入です。従来から、通勤地狱からの解放や时间の有効活用(生产性拡大)のためにテレワークの导入を求める声はありましたが、在席时间に基づく勤怠管理やオンラインのコミュニケーションへの违和感など、さまざまな要因が障害となってあまり普及しませんでした。しかし今回、职场が感染のクラスターとなったり、电车通勤中の感染への危惧があったりしたことから、急遽、どの组织でもテレワークを导入せざるを得なくなりました。

また、テレワークに付随して、业务の进め方もこの1か月で大きく変わりつつあります。自宅ならば「ヒマな时间」は呆然と椅子に座っていても无駄で、ほかに意味があることをして、时间生产性を高めたほうがよいに决まっています。また社内外で捺印による决裁ができないので、电子押印?署名の需要が急増しているそうです。さらには、テレビ会议システムによる打ち合わせが当然となり、会议の进め方や组织内の上下関係(コミュニケーションのとりかた)も徐々に変化し始めているように见受けられます。

コロナ祸が収束したとき、これらの変化は元に戻るのでしょうか?たとえば电子押印の仕组みは一度入れてしまえば、以前の印鑑ベースのシステムに敢えて戻す必然性はありません。テレワークも今后、週何日か、あるいは完全导入する公司も出てくるのではないでしょうか。そして、不景気に直面して时间の使い方や生产性に対する意识が大きく高まるとも予想されます。小职はタイムマシンを持ってないので、未来について确実なことは言えませんが、コロナ祸収束后のわたしたちの働き方は、2020年2月までのそれとはずいぶん违ったものになっていると予想されます。つまり今回、突発的に加速された働き方のトランジションには、ある程度の不可逆性が予想されるのです。

3)コロナ祸収束后の世界

働き方のほかにも、今回のコロナ祸がきっかけで大きなトランジションを経験した现场がいくつかありそうです。たとえば医疗の分野では、スマートフォン等を利用したオンライン诊疗の対象が大幅に拡大されることになりそうです。また、教育の分野でも、オンライン讲义のために滨颁罢インフラや着作物利用の制度が整备されたほか、教员もオンライン讲义に対する违和感を乗り越え、滨颁罢の操作スキルを身につけざるを得ない状况となりました。さらに今后、観光?运输产业でも大きなトランジションに直面せざるを得ないでしょう。もちろん一时的な影响でとどまり、元通りになることも多いはずです。しかし、新型コロナウイルス感染拡大が突如として加速させたトランジションは何だったのかを冷静にとらえられれば、収束后の世界を想定できるはずですし、いまから各自でその準备を进められるはずです。

3.さいごに

コロナ祸がいくつかのトランジションを加速したとはいえ、コロナ祸は起きないほうが絶対によかったことは间违いありません。コロナ祸には「よい侧面」なんて存在しません。むしろ、このような危机的状况が起きなくとも、长期トレンドを踏まえた持続可能な社会に向けて必要なトランジションを特定し、それを平常时から加速させられるガバナンスの整备が必要なのです。パンデミック?リスクのほかにも、気候変动(异常気象)や人口减少など、私たちが対応すべき长期トレンド、予见すべきシナリオはまだまだ、たくさんあるはずです。これらを见据えたトランジションを加速できるガバナンスとはいかなるものか、小职なりに考え続けたいと思います。