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Master of Public Policy, MPP

公共政策のプロフェッショナルを育成するガバナンス研究科

【铃木準兼任讲师】新型コロナウイルス感染症対策と消费税

笔者绍介

本コラムは鈴木準兼任講師が執筆しております。 笔者:铃木兼任讲师

ガバナンス研究科兼任講師 鈴木準(株式会社大和総研執行役員 調査本部副本部長)

  • 担当科目:政策研究滨-叠(社会保障のガバナンス)
  • プロフィール:都立大法卒。経済政策や社会保障制度等の调査に従事。経済财政諮问会议専门委员、男女共同参画会议议员を现任。着书に『社会保障と税の一体改革をよむ』等。

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新型コロナウイルス感染症対策として消费税减税?

ごく足下では積極的なPCR(polymerase chain reaction)検査の実施等により陽性者数が増えていますが、人口当たり死亡者数などから見ると、日本は諸外国と比較して新型コロナウイルス感染症への対応に成功していると言ってよさそうです。その要因に関する分析はこれからですが、日本の医療提供体制がそれに貢献していることは確かでしょう。

他方で、経済活动を人為的に制约するか、自由に任せるかは、少なくとも短期的には感染症拡大の问题とトレードオフの関係にあります。流行が警戒される中では、営业や生产、消费などの活动を、可能であるなら抑制するのが望ましいのは当然でしょう。その际、経済活动の自粛による损失や人々の不安に対応するために、政府には様々な政策が求められます。実际、事业者に対する政策金融を通じた资金繰り支援や持続化给付金、家计に対する特别定额给付金などが実施されています。

そうした中、一部でくすぶっているのが消费税减税です。いまのところ现実的な政策论の俎上に载せられてはいないとみられますが、もし仮に新型コロナウイルス感染症の大规模かつ全国的な流行が再び発生すれば、真剣に検讨される可能性があるでしょう。

ただ、消费税は医疗给付费を含め、社会保障费の重要な财源になっています。现在、おおまかにいって社会保障给付の3分の2は保険料、3分の1は公费(税)が财源です。消费税はその全额を社会保障に充てることが、消费税法(第1条第2项)で规定されています。消费税を减税するという政策は闻こえがいいかもしれませんが、その场合には医疗给付を含む社会保障に必要な巨额の财源をどのように别途调达するのか、セットで提案しなければ现実的な政策にはなりません。それでなくても、社会保険料と公费(消费税など)だけでは财源が足りない状况が常态化しており、社会保障费の増加が财政赤字の大きな要因となっています。

所得税や法人税など他の税とは违って、消费税を社会保障费に充てることが法律で明确にされているということは、社会保障给付を増やすべきということになれば、それに见合って消费税率を引き上げる必要があり、一方、これ以上は消费税の负担はできないということになれば、给付を抑制したり効率化?重点化する努力が払われたりするという政策论议のプラットフォームがあるということです。その意味で、消费税の社会保障目的税化は超高齢日本における公共政策上の工夫の一つといえるでしょう。消费税を减税したり廃止したりすれば、消费税がもつその役割を失わせることになり、社会保障に関する改革を后退させる恐れがあると考えられます。

なぜ社会保障の财源に消费税がふさわしいのか

医疗や介护、年金といった社会保障制度は社会保険方式を基本としていますから、第一义的な财源は保険料です。民间保険と异なるとはいっても、全额を税财源とする福祉とは异なり、保険数理的な公正さが社会保険にも求められます。ただ、民间保険と异なることも确かであり、一定の公费(税财源)を组み合わせることが妥当とされています。膨张する社会保障费を贿う财源として消费税の役割が强まっている理由は复数あります。

第一に、所得税や社会保険料は、主として现役世代が负担している公租公课です。これからは高齢になっても希望と能力に応じて働き続けられる生涯现役社会を目指すべきですが、现役世代(就业者)の减少は长期的には避けられません。しかも、现役世代の中にも所得税を负担できない人が少なくありません。つまり、一部の现役世代の负担だけで、超高齢社会を安定的に维持できるとは考えられません。

また、法人税は产业竞争力の観点から、特に国际的な调和が求められる税です。コロナ祸でいったんはスピードが落ちるかもしれませんが、経済のグローバル化が不可逆的に进むことを考えれば、法人税を社会保障财源の调达に割り当てるわけにはいきません。もしそんなことをすれば、日本公司の国际竞争力は大きく损なわれることになるでしょう。

これに対し、消费税は生活水準の高さに合わせて、老若男女を问わず全国民が负担するもので、あらゆる人々が幅広く社会保障の支え手になるという考え方にたった税といえます。働き方やライフスタイルなどによる负担の违いが小さい税でもあります。消费税は逆进的だ(所得が低いほど负担率が高い)との意见も闻かれますが、例えば勤労所得がなくなった引退期に贮蓄を取り崩して消费をしている局面では、消费税の负担率が高く见えてしまうという问题があります。しかし、生涯の所得を生涯の消费に充てると考えれば、消费税は逆进的ではありません。むしろ、定额の年金保険料など、社会保険料の方がよほど逆进的でしょう。

第二に、消费税は世代间の不公平の是正に资する面があるということです。医疗?介护、年金といった给付を受给している现在の高齢者は、保険料を纳めてきたからこそ受给権を有しているのですが、现在の受给额と対比すれば过去の保険料负担が大きいものだったとはいえません。社会保障制度が赋课方式で営まれているもと、かつては高齢化が今ほどは进んでいなかったため、受给者と支え手のバランスが良好だったからです。これに対して、现在の给付财源を拠出している现在の现役世代の负担は既に相当重く、それがさらに増えていくことはほぼ确実です。しかも、现在の现役世代が享受できる将来の给付は、将来の现役世代の生活水準との対比でみて减らされていく见通しです。

こうした世代间不公平を少しでも是正する方法が、现在の受给者にも负担を求めることができる消费税による课税です。既に给付してしまったものを返还してもらうことはできないため、世代间不公平を完全に解消することはできませんが、それに取り组む姿势を示すことは现在の财源の负担者やこれから生まれてくる世代に対する重要なメッセージになります。

消费税へのシフトは経済や财政にもメリット

第叁に、消费税は个人や公司の経済活动に対して、他の课税と比べて中立的であるというメリットもあります。新型コロナウイルス感染症が拡大する中で経済活动をどのように行っていくかには様々な意见がありますが、消费税は生产市场における课税であり、ほぼ全ての商品やサービスに対して同率で课税されるため、経済活动への歪みが小さいと考えられます。所得税や法人税といった、生产活动の结果として得られた所得の分配に対する课税は、労働や投资に望ましくない影响を与えている可能性があります。また、课税の対象を所得全体ではなく、消费に限定している(贮蓄や投资に课税していない)ことは、资本蓄积にマイナスの影响を与えない点で长期的な成长を志向した税ともいえます。

第四に、财政构造の安定化にも寄与していると考えられます。消费税は租税弾性値(生产や所得が1単位増えたときに税収が何単位増えるかを示す値)がほぼ1の税です。法人税や所得税のように景気が良くなったときに景気の拡大以上に税収が増えることはありませんが、景気が悪くなったときも大きくは减りません。これまでの财政运営をみると、予想以上に税収が増えたときにはそれを债务の返済ではなく追加の歳出に充ててしまい、予想ほど税収が上がらないときには追加で借入を増やしてしまっています。そんなことをしていれば、政府の债务残高が増える一方になるのは当たり前です。

正确な税収の见积もりが难しいという问题は、消费税のウエイトを高めることで缓和されると考えられます。国と地方自治体の合计ベースで、税収総额に占める消费税の割合は、消费税导入时(税率3%当时)は5%前后でしたが、1997年度に税率を5%にした后は15%くらいになり、现在は税率10%で约4分の1を占めるようになっています。消费税の割合を高めることで、国も地方自治体も以前よりは安定的な财政运営が行えるようになっているはずです。

第五として、社会保険の未加入や保険料未纳问题への対応にもなることを指摘できるでしょう。未加入や未纳の问题は、社会保険の运営上の课题であって消费税とは无関係ですが、社会保障制度の持続可能性への疑念や社会保険料が高すぎるということを理由に、社会保険に未加入だったり保険料を纳めなかったりする人が少なからず存在しています。重要なことは、医疗や介护、年金の给付に関して、政治は未加入?未纳の人々を放置できないということです。

つまり、未加入?未纳が拡大し长期化すれば、全额が税财源である生活保护费が膨张するなど、结局は政府が必要とする费用は减りません。保険料の未纳者には给付がなされないとしても、别途の财源が必要になるということです。実际、5%から8%、さらに10%への税率引上げに际しては、その増収分が年金受给资格期间の短缩化(25年から10年へ短缩)や65歳以上の介护保険料の低所得者向け軽减、年金生活者支援给付金(低年金者への年额最大约6万円の福祉的给付)の制度创设に充てられました。こうしたことを考えれば、ナショナルミニマムに相当する部分の社会保障を、一定の税财源で整备することに合理性があるといえるでしょう。

第六に、超高齢社会の费用のために何らかの负担増が必要というときに、现在の消费税率が诸外国の付加価値税率と比べてかなり低い(引上げ余地が小さくない)ことも消费税の役割が大きい理由になるでしょう。欧州诸国における付加価値税の标準税率は20%程度です。日本の消费税率を欧州の高い税率にわざわざ合わせる必要はありませんが、いいとこ取りはできません。むしろ日本はそれらの国々よりも高齢化率が高く、相対的に低い税负担で社会を维持する「魔法」はありません。日本は低い付加価値税率と财政赤字という组み合わせで社会保障の财源を捻出している状况を改める必要があると思います。

さらに重要な论点として、第七に、先述したように消费税の位置づけが歳出改革の“てこ”になるということです。本来、税は使途を特定しない一般财源とするのが望ましいのですが、消费税は1999年度から年金、高齢者医疗、介护といった高齢者叁経费に限定して充てることが国の一般会计の予算総则で记述されるようになり、その后、2012年の社会保障?税一体改革の一环として改正された消费税法に、现役世代の医疗や子育てを加えた社会保障四経费に消费税増収分の全てを充てることが明记されました。

消费税减税は正しい政策ではない

消费税率を10%に引き上げることについては、2012年の国会で众参両院とも约8割の賛成票で决定されました。当时の政治的な意志は尊重されなければならないでしょう。また、この间には多くの税や财政の専门家が反対した軽减税率制度の创设という决定も行われましたが、それに伴ってインボイス制度が导入されたことは(施行は2023年10月)、消费税に対する信頼を高める上で小さくない前进です。

2019年度と2020年度の政府予算では、消费税率の引上げに伴う駆け込み需要と反动减を抑制するために、キャッシュレス决済时のポイント还元、プレミアム付き商品券、次世代住宅ポイント、すまい给付金の拡充、自动车取得时や自动车税の引き下げ、住宅ローン减税の期间延长、公共投资の増额など、异例の临时?特别の措置が讲じられました。新型コロナウイルス感染症対策のための政策手段が多数ある中、时间とコストをかけて税率10%で定着しようとしている消费税を减税することは、よほど慎重であるべきだと私は考えます。

新型コロナウイルス感染症対策として国民1人当たり一律10万円の特别定额给付金が支给されていますが、一律にしたのは困っている人と困っていない人を区别できないことが理由の一つと考えられます。この点、実は、困っているかいないかは所得ではなく、消费を见ればわかります。困っている人は十分な消费ができないため消费税をそれだけ负担していませんが、困っていない人は多くの消费をしているため消费税をそれだけ负担しています。消费税を减税すれば、困っていない人を利することになりかねません。

むしろ超高齢日本の経済や社会の戦略を考えるとき、ポスト10%の検讨こそが必要でしょう。医疗费一つとっても、年齢で区切った现在の医疗保険制度では、高齢になるほど保険料ではなく公费を必要とするシステムになっており、皆が长生きするという喜ばしいことが起きるほど、皆の税负担も増えることになります。长生きすればそれだけ医疗费がかかることになり、健康寿命を延伸したらからといって医疗费が减るわけではないことは専门家の间のコンセンサスです。年金に関しては20~60歳の40年间とされている基础年金の拠出期间を、65歳超、45年间超に延长するという提案があります。拠出期间の延长によって年金额を増やすことはおおいに歓迎されますが、基础年金给付の财源の2分の1は公费です。拠出期间の延长で年金水準を引き上げるためには、税负担を増やす必要があるのです。

最大限の歳出改革が必要であるとしても、社会保障制度の持続性を确保するために、消费税を含めてその体系を再构筑しなければ、経営者らはリスクをとった投资に踏み切れず、个人も安心して消费ができません。民间部门が活力ある経済活动を展开するには、国の政策が目先の部分的なことではなく、全体として信认されなければなりません。

そうした中、消费税率を一时的にでも引き下げれば、人々に误ったメッセージを与えることになる可能性があるでしょう。ドイツが2020年7月から、日本の消费税に相当する付加価値税の标準税率を19%から16%(食料品などの軽减税率は7%から5%)に半年间に限って引き下げましたが、ドイツは平时から财政规律に极めて厳しい点で日本と根本的に异なることを踏まえる必要があります。日本は1989年に消费税を税率3%で导入し、8年后に5%に引上げた后、10%とするのに22年を要しました。もし今、消费税率を引き下げれば、10%に戻すだけでも极めて多大な政治资本が必要になるでしょう。