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定例研究会 2013年度

2013年度 第5回『ジェンダー?ハーモニー:インドおよびネパール固有文化の视点から见た男女间の调和的関係』

Gender Harmony: Indigenous Perspectives from India and Nepal

2013年11月26日(火)実施

讲师略歴:ダーム?バウーク氏



1995年University of Illinois at Urbana-ChampaignからPh.D取得。1989年University of Hawaii at Manoa からMBA取得。現在、ハワイ大学マノア校、Shidler College of Business 教授で、経営学や文化?地域心理学(Management and Culture and Community Psychology)を専門とする。ハワイ大学大学院のPh.Dプログラムでは、主として、Cross-cultural Management(異文化マネジメント)、MBAコースでは、Global International Business Communication(国際ビジネスコミュニケーション)やManagement of Multinational Corporations (多国籍企業マネジメント)、また学部では、Positive Psychologyなどの授業を担当している。これまで、数多くの業績があり、60を超える編著、共著、専門学術雑誌論文、160を超える研究学会や大学での研究会のプレゼンテーションがある。AOMなどの学術学会から、数多くの賞を受賞している。現在の研究の興味は、固有文化心理学、異文化トレーニング、平和学などである。
報告:山口 生史(情报コミュニケーション学部教授)
 本講演は、異文化トレーニング、異文化ビジネス、固有文化心理学、ポジティブ心理学などを専門とするハワイ大学(マノア校)教授、Dharm Bhawuk先生によって行われた。Bhawuk教授の本講演の要旨を抜粋要約すると、その内容は、以下の通りである:
  西洋では、ジェンダー戦争は、長きにわたり続いている....生きることに関する競争的西洋モデルが、男女の対立の源泉となってきたという。霊長類およびその他の動物に関する実験でも支持されたとおり、生物の協力的性質に関する最近の調査は、競争モデルの妥当性に対して疑問を呈している。そして、そのことは、アジアの知恵の伝統により生みだされたジェンダー調和モデルに可能性を開くものである。オートエスノグラフィー、古典的インドテキスト分析、メタファー、事例研究の手法により、調和に基づいたジェンダー関係の非伝統的モデルを提示する。
 讲演は、この要旨にそったものであり、「ヴェーダからプラーナおよびマヌ法典にいたるまでの古典テキストに见られるジェンダー?ハーモニー」、「物语とメタファーに见られる民间伝承におけるジェンダー?ハーモニー」、「ジェンダー?ハーモニーの事例绍介」、「自らの経験に基づいて考えるジェンダー?ハーモニー」、「対立(西洋)対协调(东洋)」といったテーマで构成された。叠丑补飞耻办教授自身が、ネパール出身の研究者であることもあり、自己の経験に基づいた、いわゆる础耻迟辞别迟丑苍辞驳谤补辫丑测による分析もあった。
 「ヴェーダからプラーナおよびマヌ法典にいたるまでの古典テキストに見られるジェンダー?ハーモニー」に関しては、The vedas、The upaniSads、The purANas、the manusmRtiというインド古典の中にある記述に見られるジェンダー?ハーモニーを紹介、解説した。これらの記述には、神?女神がそれぞれジェンダー?ハーモニーを体現しているらしい。インド古典テキストでは、Conflictではなく、Harmonyが強調されており、平和を求めることが強調されている。これは、ネパール文化?インド文化において重視される考え方であり、この考え方は、インドにおけるgenderという概念に対しても同様である。
 「物语とメタファーに见られる民间伝承におけるジェンダー?ハーモニー」については、燃えるのも早いが消えるのも早いという干し草に火がつくような夫妇间対立を描いた物语と车の両轮としての夫と妻の例え话が绍介された。ともに、ハーモニーという概念が示唆されているものであった。
 「ジェンダー?ハーモニーの事例紹介」としては、SacrificeとToleranceのバランス、そして、片方が何かを意思決定するのではなく、夫婦二人による共同決定(joint decision)の重視を示す事例が紹介された。それぞれの事例に、インド文化におけるハーモニーの概念が見えた。
 「ジェンダー?ハーモニーのAutoethnography」では、専業主婦vs.一家の稼ぎ手という西洋の構図とgRhiNi & gRhasthaというネパールやインドにおける夫婦の関係の相違を、自らの経験に基づいて分析した。gRhiNiは主婦の意味であり、gRhasthaは家長の意味である。女性は弱いというのはステレオタイプに過ぎない。ネパールやインドでのgRhiNi と gRhasthaという考えは、家庭における、二人の共同作業を意味している。そして、女性は弱いというのも正しくない。
 「西洋の対立(颁辞苍蹿濒颈肠迟)対东洋(贰补蝉迟)の协调」という対比を以下のように提示した:西洋の竞争型モデル 対 东洋の协力型モデル; 西洋と东洋の女性に対する考えかたの违い; 西洋の个人主义など 対 ハワイの础尝翱贬础精神(爱など); 西洋の自立 対 东洋の相互依存; 西洋の胜利主义や支配など 対 日本などの和、恩、义理、である。
 要旨にあるように、讲演では、竞争的西洋モデルが、男女の対立の源泉となっており、様々な动物を含めた生物の协力的性质、すなわち、人类の协力型モデルの重要性を强调した。ジェンダー间の协力はごく自然であり、ジェンダー関係においては相互依存モデルが自立モデルより良く现実を反映していると主张する。そして、それらの主张は、アジアの知恵の伝统により生みだされたジェンダー调和モデルなのである。最后に、文化的感受性をそなえたフェミニズムモデルの必要性を述べた。
 100分强の讲演の后、お二人の参加者から质问があった。最初の质问は、ネパールでの未婚女性のジェンダー?ハーモニーバランスについてであった。二つ目の质问は、どの时期に西洋と东洋のジェンダーに対する考え方の违いが出てきたのかという质问であった。质疑応答を含めて、讲演は、约120分で终了した。

2013年度 第4回『オーストラリアのスポーツに见るジェンダーとセクシュアリティ——ヘゲモニー?抵抗?変化』

Gender and sexuality in Australian sport: Hegemony, resistance, and change

2013年11月19日(火)実施

讲师略歴:ブレント?マクドナルド氏



ヴィクトリア大学(オーストラリア)スポーツ科学部讲师。専门分野はスポーツにおけるジェンダーやセクシュアリティ。漕艇やラグビーのプレーヤーでもある。1994~1996年にかけて静冈でラグビーをしていた経験が日本のスポーツ文化に兴味を持つきっかけになり、日本の大学の体育会における男らしい(尘补蝉肠耻濒颈苍别)アイデンティティの形成などについての研究を行っている。2013年には同志社大学に所属し、日本の运动部活动における体罚の问题についても调査を行っている。
主な着书や论文
McDonald, B & Burke, M. (2011) ‘Foucaultian subjectification and Japanese University rowers’, in M. Burke, C. Hanlon & C. Thomen (Eds.) Sport, Culture and Society: Approaches, Methods and Perspectives, Hawthorn: Maribyrnong Press, pp. 203-218.
McDonald, B. (2009) ‘Learning Masculinity through Japanese University Rowing: joge kankei and hierarchical Relationships. Sociology of Sport Journal, Vol. 26, no.3, pp.425-442
McDonald, B & Komuku, H. (2008) Japanese Educational Sport and the Reproduction of Identity In: Hallinan, C & Jackson, S. (Eds.) Sport and Cultural Diversity in a Globalized World. Oxford UK: Emerald, pp.97-110.
McDonald, B. (2007) Globalisation, Diversity and Changes to Practice and Identity in Japanese University Rowing Clubs. International Journal of Sport Management and Marketing, Vol.2, Nos.1/2, pp.134-145
McDonald, B & Hallinan, C. (2005) Seishin Habitus: Spiritual Capital and Japanese Rowing. International Review for the Sociology of Sport, Vol.40, No.2, pp.187-200
报告:高峰 修(政治経済学部准教授)
 オーストラリアは多文化主义の国であると同时にスポーツ大国の一つである。そこではスポーツは、多くの移民をオーストラリア社会に统合する有効な方策として活用されている。また社会における平等には敏感であり、そこにはジェンダーやセクシュアリティの问题も含まれている。今回の讲演では、オーストラリアのスポーツ界が抱えるジェンダー/セクシュアリティの问题と、それに関する改革についてお话していただいた。
 ブレント氏はまず、オーストラリアで1984年に成立した性差別法(Sex Discrimination Act 1984)の改訂を追い、そこに性的指向やジェンダーアイデンティティが含まれるようになったことを確認した。さらにこの法律は雇用や教育、サービス、社会的なクラブ活動などに適用されるが、オーストラリアのスポーツはこれらの分野とも深く関わっているので、この法律の適用範囲にあることを説明した。
 次に政策についてであるが、オーストラリアのスポーツ政策は基本的に4年毎にその方向性が示され進められる。その最新版である“The Future of Sport in Australia(2010)”では政策の主眼となる9つの分野を示しており、そこではスポーツにおいて女性がリーダーシップ的役割を得てその存在感を示すこと、ホモフォビアやセクシュアリティに関する差別をなくすことが挙げられている。こうしたジェンダーやセクシュアリティに関する項目は日本のスポーツ政策(例えばスポーツ基本法やスポーツ基本計画など)においては具体的に取り上げられておらず、取り組むべき問題として認識されていないことがわかる。
 ブレント氏はその后、オーストラリアにおけるスポーツとジェンダーに関する研究や政策の重要事项として以下の点について説明した:
?移民女性のスポーツ参加率は国内平均よりはるかに低い。その背景には宗教的要因、社会経済的要因、英语能力の要因などが络まっている。これに関する试みの一つとして、地域のフィットネスセンターでは女性だけのプログラムの时间帯を设定している。
?セクシュアル?ハラスメントに関しては、Australian Sports Commission(オーストラリアにおける国家的スポーツ統括組織)がPlay by the Rulesというプログラムをオンラインで展開している。また、たとえばAustralian Football LeagueではRespect Womenというキャンペーンを行っている。
?1980年代以降に政府が健康やフィットネスに取り组んだこともあり、スポーツや身体活动の実施率における男女间の顕着な差はなくなっている。しかしその背后にはより根深い男女の権力関係がある。
?国レベルのスポーツ組織でリーダーシップをとっている女性は25%、プロフェッショナルなスポーツ組織では13%にすぎない。Australian Sports Commissionでは、指導者、審判、組織管理者、メディアやマーケティング分野でリーダーシップをとる女性に対する助成金制度を設けている。
?テレビやラジオ、印刷物などのメディア报道における女性スポーツの割合は着しく低く、报道されている场合でも女性アスリートは矮小化され幼稚に、性的に描かれる倾向にある。
?スポーツは尝骋叠罢滨蚕を敌视する场のひとつである。こうした现状に対して、いくつかのクラブや组织は尝骋叠罢滨蚕の人々にフレンドリーな环境を作る试みを始めている。

 豊富な资料や事例が示され、予定していた时间をオーバーする讲演となった。本センターの研究会などでスポーツをテーマとするイベントが企画されたのは今回が初めてのことであり、聴众からは多くの质问が出され、ブレント氏もまたそれらに丁寧に回答してくださった。
 今回のブレント氏による讲演は「スポーツにおけるジェンダー论」概论としての意味をもつことになった。特にスポーツ実施、组织におけるリーダーシップ、メディア报道については、女性の置かれている状况はオーストラリアと日本で似通っている。他方でセクシュアル?ハラスメントやセクシュアリティに関しては、日本では取り组みが始まったばかりか、あるいは取り组みすら始まっていないのが现状である。成熟したスポーツ文化、成熟した社会の醸成には、こうした问题群の解决に向けた具体的施策の展开が求められるだろう。

2013年度 第3回『ジェンダー间の机会平等へのあらたな道程-男女平等は世纪の课题!』

Neue Wege – Gleiche Chancen. Gleichstellung bleibt Jahrhundertaufgabe!

2013年10月16日(水)実施

讲师略歴:ウタ?マイヤー=グレーヴェ氏



ドイツ?ギーセン大学教授。専门は家族社会学、家政学、ジェンダー?时间?サービス労働に関する研究。
1978年产业社会学で博士号を取得し、1986年フンボルト大学で家族社会学の教授资格を取得。旧东ドイツで社会学、社会政策の研究员を、1990年にはドイツ青少年研究所学术研究员などを歴任し、1994年にギーセン大学教授に着任(家政経済学?家族社会学担当)。ドイツ政府连邦家族省第7家族报告书専门家委员会メンバー(计7名)に选ばれ、同メンバーのうち唯一、第1男女平等报告书専门家审议会メンバーに採用された。ヨーロッパ连合(贰鲍)?共同体イニシアチブ平等(贰蚕鲍础尝)の外部専门委员で、2013年5月1日からは、连邦家庭?高齢者?女性?青少年省(叠惭贵厂贵闯)が后援する「家事に类似する职业の専门家および资格向上のための科学的资格センター」所长を务める。
最近の主な论文
"Zeugungsstreik" und "stiller Geb?rstreik" - Kleinfamilie scheitert auch an ungünstigen Rahmenbedingungen.(「子づくりストライキ」と「静かな出産ストライキ」:小家族は不利な限定条件にも挫折する,2013年); Die Systemrelevanz generativer Sorgearbeit. Oder: Was kommt nach dem T?chterpflegepotential? (生殖ケア労働の制度上の意義。もしくは、娘が世話する可能性の次にくるものは? 2012年);Armutspr?vention von Kindern und Familien im Sozialraum. Eine strategische Aufgabe zur Verrichtung von Bildungsarmut.(社会的空間における子どもと家族の貧困防止:教育の欠如に働きかけるための戦略的課題,2011年)
报告:水戸部 由枝(明治大学政治経済学部専任讲师)
 男女平等はなぜ必要か。男女平等は何をつうじて実现されるのか。本研究会では、ドイツ政府の家族政策立案者として长年活跃し、近年では日本学术会议シンポジウムなどでも発表されているグレーヴェ氏に、ドイツ连邦共和国の第1男女平等报告书のコンセプトおよび内容について报告していただいた。
 グレーヴェ氏によると、2008年に委任され、2011年に完成した本报告书には、ポイントが二つあった。その一つは、「限られた时间」をどう使うか、という问题である。1日24时间の限られた生活时间の使い方は年齢层によって异なり、生涯経歴のなかには、とくに时间的余裕のなくなる时期(たとえば「人生のラッシュアワー」期)がある。また、ドイツにおいて个人が使える时间あるいは时间の使い方は、いまだにジェンダーによって非常に强く规定されていて、男女间での违いは大きい。育児と介护に费やす时间は、男性よりも女性の方がはるかに多く、母亲の就労时间を短缩させる。そしてこのことは长期的にみると、女性の生涯赁金と老齢年金に不利な结果をもたらすのだ。
 それゆえ第1报告书では、男女両性が自分の生计确保に対して个々に责任を负い、また男女両性がともに育児と介护へのケア労働に従事するといった「新しいジェンダー像」が提示された。また职业と家族をよりよく両立させるために、家事や家族支援向けサービスの拡充をうながすことが、强く推奨された。たとえば学童保育などが整备されれば、就学期の子どもをもつ母亲は最大461,000人まで就労復帰が可能となり、税収は10亿2000万ユーロ、社会保険収入は26亿2000万ユーロ増加するという。
 もう一つのポイントは、女性の就业状况の改善である。そのためには、男女の赁金格差の缩小と指导的地位への女性の登用促进が重要である。前者については、ドイツの赁金?给与のジェンダー格差は贰鲍最大で、教育水準が高いほど収入格差は広がる倾向にあり、家族をもつ男女フルタイム就労者の収入格差はここ20年间で拡大したといわれる。后者については、「ユーモア感覚と男社会の寛容さが失われる」、「女性管理职がいると、相互関係のネットが壊される」などを理由に、いまだ女性の管理职への登用に悬念を示す公司が少なくない。しかしある调査结果によると、3人以上の女性役员がいる公司は、自己资本収益率の达成が最高で53%高く、経営阵に男女双方がいる公司は、売上、収益、従业员数、株価に関して全公司の平均以上の成长を达成した。それに対して男性だけで操业される公司は、すべての指数において全公司の平均以下であった。
 人口统计学上、ドイツで可能な就业人口は毎年25-30万人减少し、2015年には200万人余りの労働力が不足するといわれる。そうしたなか、拡大しつつある低赁金就业部门に女性を组み込むのではない形で、女性の就业机会を増やし、就业状况を改善するにはどうしたらよいのか。グレーヴェ氏によると、まず男女双方が中?长期的な人生设计をたてることが重要であるという。そのうえで、就业労働?ケア労働をフレキシブルに时间配分できるようにすること、公的なサポート机関の设置とサービス整备、个人単位の纳税?社会保障制度がその解决策になりえると、氏は指摘する。
 最新かつ豊富なデータを駆使しながら、「时间の使い方」を切り口に男女平等について考えるグレーヴェ氏の思考パターンは、参加者にとって大変刺激的であり、ゆえに途切れることのない活発な质疑および内容补足しながらの丁寧な応答がつづいた。こうしたやりとりは、これまでグレーヴェ先生と共同研究を重ねてきた姫冈とし子教授(东京大学、専门はドイツ近现代史?ジェンダー史)による同时通訳なしには実现できなかったであろう。
 当日は台风の影响で全日休讲のなかでの研究会开催となったが、それにもかかわらず参加してくださった学内外の方々およびグレーヴェ氏?姫冈氏に心より感谢の意を表したい。

2013年度 第2回『国际比较のなかの结婚と女性労働』

2013年10月11日(金)実施

讲师略歴:筒井淳也氏



立命館大学産業社会学部准教授。専門分野は、計量社会学、経済社会学、家族社会学。少子高齢化、女性雇用、ワーク?ライフ?バランス、福祉国家論などを研究テーマとしている。最近の主な论文に“The Transitional Phase of Mate Selection in East Asian Countries”(2013)、「公的セクター雇用における女性労働とワーク?ライフ?バランス」(2012)などがある。
報告:出口 剛司(東京大学大学院人文社会系研究科准教授?明治大学情报コミュニケーション学部兼任講師)
 かつてないスピードで进行する未婚化?少子高齢化の中で、ジェンダー研究も新たな局面を迎えている。ジェンダー研究の当初の课题は、伝统的な家父长制からの女性の解放と社会进出を実现する制度的条件を解明する点にあった。しかし现在、上述の社会的问题をめぐって、多くのジェンダー研究者が主张する男女平等の実现やワーク?ライフ?バランスの确立が少子高齢化の歯止めとなるという见解に対し、性别役割分业の解体、女性の社会进出を未婚化と少子高齢化の原因と同定する言説が対峙している。そうした中で、ジェンダー研究は、未婚化?少子高齢化の现実をどのように理解し、どのような政策的课题を导出するか、という実証的かつ政策的な课题に直面しているといえる。いわば、论争の场は伝统的家父长制家族の维持か、解体かというより理念的な领域から、データに基づく政策论议へと移行しているのである。
 今回、本センターでは立命馆大学产业社会学部准教授の筒井淳也氏をお迎えし、アメリカ及び北欧における「女性の働き方」と「公的セクターの役割」を中心とした実証研究の成果をご报告していただいた。筒井氏は、日本を代表する计量社会学の研究者であり、本定例研究会での氏の报告により、未婚化?少子高齢化に関する政策论议において、ジェンダー研究と政策立案者の考虑すべき前提条件がいっそう明らかになったように思われる。
 筒井氏はまず、计量研究の动向を以下のように整理する。戦后の高度成长期とそれに続く安定成长期にかけて、日本の社会学では机能主义ならびに社会阶层论の理论枠组みに立脚した社会移动の研究が盛んになされてきた。具体的には、主に男性の雇用が安定化していくなかで、亲(父亲)の职业阶层とその子どもの职业阶层の関连性の强さが问题とされてきた。そこでは能力主义に基づいた机会平等な社会が理想とされており、本人の努力によらないで出身阶层によって本人の阶层帰属が决まるということがどの程度生じているのかが研究関心を引きつけてきた。しかし1970年代后半以降、経済成长が钝化していくなかで、日本は未婚化、少子高齢化に直面し、社会学者の研究関心も机会平等から経済成长や人口问题に移行していくことになる。
 しかし筒井氏によれば、未婚化?少子高齢化は、すべての先进国が経験しているわけではなく、日本をはじめ东アジア诸国で顕着に进行しているという。その中でこれまでの実証研究の成果から、少子化は、仕事と家庭の両立支援制度や働き方の柔软性が、どの程度女性労働力率の上昇が出生率を低下させる动きを中和できるのかの问题であることが明らかになっている。他方で少子化の进展度合いはいわゆる政府の大きさとは无関连であり、社会保障制度が充実した北欧诸国でも、逆にそれが発达していない英米圏でも、相対的に高い出生率が実现している。氏はこの谜をとく键を共働き家庭の普及の有无に求める。すなわち、男女赁金格差が小さいなど、仕事をする上での男女平等が进展している社会であれば、たとえ男性の所得が安定してなくともカップルを形成することで生活が成立するケースが増え、そのためにカップル形成、ひいては出生が促进されるのである。
 未婚化や少子高齢化を以上のようにとらえた场合、社会保障や家族支援をただ手厚くすれば问题が解决するわけではない。たとえば北欧诸国、とくにスウェーデンでは育児休业が手厚く保障されているために、女性が男性と同等に民间で活跃することに困难があり、女性の多くは公的に雇用され、いわゆる福祉労働に従事している。この意味で男女の赁金格差の小ささは女性の公的雇用によって保証されているのであり、民间セクターにおける自由な职业选択の结果からであるとは言いがたい。他方でアメリカにおいては民间公司における女性の活跃の幅は北欧よりも広いのだが、社会保障の未発达からいわゆるソロ?マザーが贫困に陥るケースが非常に多いなど、别の问题が生じている。
 女性の働き方や公的セクターの役割という议论に関して、一方では女性のキャリア形成の促进(英米型)、他方で子育て支援の拡大(北欧型)に、日本の进むべきモデルが求められる。しかし、筒井氏が警告するように、いずれのモデルもそれぞれの国の固有事情とそれに规定された矛盾を抱えており、これらのモデルを无条件に受け入れることはできない。さらに、日本は翱贰颁顿加盟国では公的雇用の比率が最も小さい上、北欧型の男女平等を実现する素地も极めて小さく、また他方でアメリカのように民间で性别によらずキャリアを形成するような仕组みも存在しないという现実を抱えている。こうした中でジェンダー研究の课题とは、政策モデルを支える前提条件及び予想される负の帰结を丹念に解明していくことであろう。そして政策形成においては、100%完璧な制度の输入が不可能である以上、上からの「导入」ではなく、下からの「议论と合意」を积み重ねていかねばならない点を氏とともに确认しておきたい。

2013年度 第1回『人の移動?身体?ジェンダー ~トランスナショナルな卵子提供のフェミニスト分析』

Ethics on Eggs: Feminist Analyses of Transnational Egg Donation

2013年5月21日(火)実施

讲师略歴:シャルロッテ?クロレッケ氏



南デンマーク大学文化学部准教授。専门は、ジェンダー研究、カルチュラル?スタディーズ。新しい生殖医疗技术、フェミニスト?コミュニケーションに関する研究に従事。现在は、スペインにおける卵子提供、インドにおける代理母出产の事例を中心に、出产旅行、卵子提供、代理母出产といったテーマについて调査している。同テーマに関する论文多数。
详细は次のリンク参照:
報告:田中 洋美(明治大学情报コミュニケーション学部特任講師)
 近年、医疗目的の国际移动が活溌になっている。とりわけ短期滞在型のものは医疗観光(メディカル?ツーリズム)として医疗関係者だけでなく政府や自治体の注目も集めている。今年度最初の本センター定例研究会では、不妊治疗目的の国际移动というテーマを取り上げた。讲师にはシャルロッテ?クロレッケ氏(南デンマーク大学文化学部准教授)をお招きし、国境を超えて展开される不妊治疗の诸相についてデンマークなど欧州の事例を中心にお话いただいた。
 奇しくも日本では今年1月NHKの番組「クローズアップ現代」で卵子提供に関する特集が組まれたばかりであった 。また時期を同じくして国内発の卵子バンクがNPO法人として設立されたが、本研究会開催の1週間程前には、この卵子バンクへの卵子提供に9名の申し出があったことが発表されたばかりであった1。このように絶妙なタイミングで本研究会は开催され、卵子提供や卵子提供ツーリズムについて考える非常に良い机会となった。
 ところで非配偶者间人工受精の歴史は1940年代に遡る。日本においては、日本产科妇人科学会の见解を基に生殖补助医疗の适用は婚姻関係にある夫妇に限定され、体外受精や胚移植における第叁者配偶子の使用は自主规制されてきた2。その后、旧厚生省および现厚生労働省では専门家らによる议论を経て、一定の条件の下であれば非配偶者间人工授精を含む第叁者配偶子を用いる生殖医疗を施行可能としてもよいという见解が呈示された3。しかし以后も、第叁者配偶子を用いる医疗により出生した子の民法上の亲子関係を规定するための法整备は进んでいない。実际には、法的ガイドラインのないまま国内の民间クリニックであるいは海外で第叁者配偶子を用いた不妊治疗を受ける人々がいるのが现状である4
 では、ヨーロッパではどうであろうか。クロレッケ氏によれば、ヨーロッパで不妊治疗目的の国际移动が活発化した要因のひとつは、各国间での法规制の违いであるという。日本でも同様の理由でアメリカやインド、タイ等で不妊治疗を受ける人々がいるが、ヨーロッパでも规制が比较的厳しい国(ドイツ、イタリア、フランス、ノルウェー等)から缓い国(スペイン、ギリシャ、ロシア)へと人の流れが起きているという。
 このような不妊治疗目的のトランスナショナルな医疗観光において、デンマークは送り出し国かつ受け入れ国である。卵子提供においてはデンマークからスペインや东欧へ、精子提供においてはデンマークへ向かう人の流れが起きているのだ。卵子提供を受けるための年齢制限はデンマークでは45歳、スペインでは51歳である。加えて、デンマークでは卵子提供者が比较的少ないことから待机期间もかなり长い。こうした事情からスペインで卵子提供を受ける女性が多いという。その一方で、デンマークには世界有数の精子バンクがあるという。なぜデンマーク人男性の精子の需要が高いのかについては后述するが、こうしたデンマークをめぐる状况の考察を通して、クロレッケ氏は叁つの论点を呈示した。
 第一に、生物学的资源の交换が「身体の商品化」につながっているとの指摘である。配偶子提供については爱他主义的言説が见られる倾向があり、提供者への报酬はないか低く抑えられている国が多いという5。しかし、一部の国では不妊治疗に大いなるビジネスチャンスを见いだし、积极的に利益を追求しているクリニックが存在すると同时に、そうしたクリニックに报酬と引き换えに配偶子を提供する、あるいは代理出产のため身体を提供する人々もいる6。クロレッケ氏は、こうした「身体の商品化」について判断を下すことは难しいが、引き続き批判的に论じていく必要性を强调した。
 第二に、不妊治疗ビジネスにおける「选别」が人种主义的なステレオタイプの再生产につながっているのではないかという悬念である。氏の発表では、不妊治疗クリニックの広告の分析や卵子提供を受けた人々への闻き取り调査の结果から、卵子提供を受けた、あるいはこれから受けることを希望するデンマーク人女性(ないしカップル)の多くが、ラテン民族の特徴とされる明るいパーソナリティと魅力的な容貌もあってスペインを魅力的な医疗観光目的地としていることが指摘された。またデンマーク人男性の精子の需要が高いことについては、デンマーク人男性の人种的イメージ(白人、ブロンド、青い目等)の影响を挙げ、白人优越主义的な选好が见られることが述べられた。精子や卵子のデータバンク化により、人种や民族の特徴だけでなく学歴や出身阶层などさまざまな属性についてフィルタリングが可能となる。これにより商品化される配偶子の値段が异なれば、属性による序列化が起こりかねない。
 第叁に、不妊治疗が孕む女性の分断ないし女性间の差异の问题である。まず、生殖をめぐるジェンダー规范の问题が挙げられる。デンマーク社会では、子どものいない中高年女性に対する偏见が存在するという。产む女は「母」として认められ、产まない(あるいは产まない选択をした)女は自己中心的でわがままであると捉えられる倾向があり、女性が自ら出产することが重视されているため、养子縁组ではなく不妊治疗を受けて子どもを产むことにこだわる女性がいるというのである。また不妊治疗においては提供する侧と提供される侧、身体の商品化ということでいえば消费されるものを提供する侧と消费する侧という図式がある。上述したように、卵子提供や代理母出产の场合、経済的南北格差を背景にビジネスが成り立っていることもあり、不妊治疗を受けるための资源を持つ者の优位性や自らの身体の一部を「商品」として提供する侧の社会経済的立场について考えさせられる。
 こうした女性という社会的カテゴリーの内部における立场の违いについて、自分のからだのことは自分で决めるという自己决定権を主张してきたフェミニズムはどう论じたらよいのだろうか。不妊治疗はある意味、自己决定に基づく実践である。しかしそれが既存の格差や不平等の构造を利用する形で、あるいはそれらの持続ないし再生产に加担する形でなされるとしたらどうであろうか。こうした不妊治疗をめぐるさまざまな伦理的问题について今后も批判的议论を重ねて行くことの重要性が、クロレッケ氏の発表を通して改めて确认された。
 以上、氏の発表の主要な论点をまとめたが、発表后はフロアから多くの质问がなされ、质问者を交えて活気あふれる议论がなされたことを付记しておきたい。闭会后、クロレッケ氏からは贵重な机会を设けていただいたと感谢の言叶を顶いた。この场を借りて、発表していただいた氏ならびに当日足を运んでいただいた方々に暑く御礼を申し上げたい。

1&苍产蝉辫;同番组では、卵子提供を受けるために、あるいは卵子を提供するために日本から他の国に渡航する人々がいることが报道された。
2 『体外受精?胚移植に関する见解』、1983年10月。
3 厚生省厚生科学审议会先端医疗技术评価部会?生殖补助医疗に関する専门委员会「精子?卵子?胚の提供等による生殖补助医疗のあり方についての报告书、2000年12月」、厚生労働省厚生科学审议会生殖补助医疗部会「精子?卵子?胚の提供等による生殖补助医疗制度の整备に関する报告」、2003年4月。
4 日本生殖医学会伦理委员会报告、「第叁者配偶子を用いる生殖医疗についての提言」2009年3月。
卵子提供者へ支払われる金额には差があり、爱他主义の色合いの浓いデンマークでは日本円で约9,000円、一方でスペインでは约130,000円であるという。
6 例えば、代理母出产の世界的中心地のひとつであるインドにはそのような倾向があるという。